夏だ、ウナギだ、『ブリキの太鼓』だ!

 土用の丑の日は過ぎてしまったが、今年は絶滅危惧だなんだとウナギの話を多く見た。ウナギでおれが思い浮かべる作品は一つだ。ギュンター・グラスの『ブリキの太鼓』だ。馬とウナギだ。知ってる人には説明不要だろうし、知らない人は読むべきだ。
 とはいえ、おれは『ブリキの太鼓』を読了した覚えがない。読んだのはいつか。中学か高校のころ。途中で読むのをやめてしまったような気がする。そして、おれがひどく印象に残っているのが馬とウナギだ。漫画『力王』でもウナギの印象的なシーンがあるが、ギュンター・グラスの方が強かった。
 というわけで、おれは映画版『ウナギの太鼓……いや、違う、『ブリキの太鼓』を観ることにした。いくつかヘヴィな読書をしているので、そこに『ブリキの太鼓』を加えるのは厳しいと思ったからだ。とはいえ、原作はそれなりに長かったはず、ウナギのシーンは映像化されているのだろうか……。
 されていた! しかもかなりグロテスクだ! 作品全体がどこかグロテスクなんだけれども、その中でもかなりきている感じだ! うわ、今の日本人がこれ見たら、ウナギの消費量も減るんじゃねえの……。
 とまあ、ウナギ走ってしまったが(どんな走りだ?)、映画としてもさすがになにか賞をとっただけあって(おれはよく知らん分野については権威主義なので)、長丁場飽きずに見られた。舞台は主に二次大戦のダンチヒ自由都市ダンチヒ。三歳で体の成長を止めてしまった少年(役を演じたのも小人症の人らしい)。いつもブリキの太鼓を叩いている。叫び声で遠方のガラスを割ったりできる。母親は二人の男から愛され、どちらが彼の父かはわからない。時代はナチスが台頭してくるころ。母を愛する男の一人はダンチヒポーランド人。1939年、ダンチヒで戦火の火蓋が切って落とされる……。原作は(まったく覚えていないが)、精神病院での主人公の回顧のような形をとっているらしい。その構造はばっさりカットされている。それでも長い。さらにいえば、おれはディレクターズ・カット版を見ていないので、それでも20分短いようだ。でも、その中に詰め込まれたエロ、グロ、暴力、愛や死の詰め込まれ具合ってのは見ものだった。なんだろうか、たとえばジョン・アーヴィング原作の映画を観たあとに近いだろうか? 原作のwikipedia:ギュンター・グラスが長年武装親衛隊に所属していたことを隠していたことなどを含め、一つ「子供の目」であることを選んだ主人公の目から、その世界を見てみりゃいかがでしょう。きっとそこには、醜いわれわれの世界に通じるものがあるんだ、きっと。

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……これはおそらく新訳で、おれが遠い昔に読んだのとは違うだろう。