映画『ノスフェラトゥ』を観る

 トランシルバニア星雲にあるトランスセクシャル星から来た怪人の映画なら観たことはあるが、普通のトランシルバニア映画は観たことがなかった。『屍者の帝国』の前に観ておけばよかったか。ヴァン・ヘルシング先生活躍しないけれど。
 それでこの映画、冒頭のミイラをねっとり映してからのコウモリ、あたりから、主人公の旅立ちのところで流れる曲のかっこよさ、見事なもんですわ。
 それでもって、怪優クラウス・キンスキー(二度目)のドラキュラ伯爵が主人公を幽霊城に出迎えて登場。夜の城にあの扮装で……。おれが思い浮かべたのは、なぜか現代日本のお笑いコントだった。ジャンルとしてあるのかどうかしらんが、夜道に迷った人が一軒家を見つけ、どう見てもおかしい人に出迎えられる、みたいな。まあ、そんなのは人類の物語の起源からあるような類型なのだろうとは思うが。
 そのキンスキー・ドラキュラが、なんというかすげえなあ、と。紳士ドラキュラとかいうんじゃなくて、クリーチャー一歩手前というか、それ以上というか……。重要な台詞はわりと前半にバーっと述べてしまって、そのあとはほとんど喋らない。喋らないけど動きで見せる。ただ向こうに走って行くだけで絵になる。日光にもだえ苦しむだけで絵になる。キンスキー伯爵すごい。
 と、言うわけで、とりえあず「ドラキュラ伯爵もの」のスタンダード(かな?)を一本観たな、という気になった。あんまり好みのジャンルじゃあないけれど、こいつは面白かった。ヘルツォーク、また観ようじゃないか。そう思った。

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