『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う! 』〜We're so young and so gone

1晩に5人で12軒のハシゴ酒!
その時、地球はとんでもないことになっていた! ?
学生時代に成し遂げられなかった“1晩に5人で12軒のハシゴ酒"にリベンジする為、イギリス郊外の街“ニュートン・ヘイヴン"に舞い戻ってきた“アラフォー男達"。やがて、何だか街の様子がおかしいことに気付くが、実は街の人々は“何者か"によって操られていた・・・。
自由を取り戻す為、そして“世界を救う"為、12軒目のパブ“ワールズ・エンド(世界の終わり)"を目指して、“酔っぱらい達"の“どうしようもない戦い"が始まる!

 映画館で観るしかないと思っていたが、なにかの行き違いで観ることのできなかった一作。ようやくDVDで観ることができた。そしてやはり思った、映画館で観たかった、と。
 その理由はほとんど一発である。Suedeの初期の名曲「So Young」が、むっちゃくちゃいい使われ方をしていたからだ。事前情報として、Suedeを含む90年代初期のブリットポップ周辺の音楽が使われていることを知ってはいたが、なんというか破格の扱いじゃないのか。まるでPVを観るようだ。もちろん、そこに映っているのはソー・ヤングな連中じゃない。「アラフォー男たち」だ。その男たちが馬鹿みたいなパブめぐりに出る、そのときに流れるんだ、「So Young」。ガキ臭くピンポンダッシュなんかしやがるんだよ。たまんねえよ。

 ああ、おれはこれを大音量で観たかった。そう思った。そしたら、サイモン・ペッグがブレット・アンダーソン兄さんに見えてくるじゃねえの。そして、おれはまだ中学入りたてのころにスウェードにハマったんだけど、その主人公に感情移入しまくっちまったよ。べつにおれはハイスクールのキングだったわけじゃあない。5人くらいの仲間はいたかもしれないが、卒業前にちりじりになっちまったし、おれは結局ひとりになった。だから、今でも連絡の取れる友人なんてのはひとりもいない。ただのひとりもだ。また、夜逃げみたいにいなくなっちまったもんだから、だれからもおれに連絡は取れねえだろう。
 ある意味では主人公より惨めかもしれない。でも、ろくな仕事につかず、ろくでもない貧乏で、アルコールとドラッグ(精神科の処方薬)に溺れ、ぜんぜん社会人ってもんになってねえおれ。三十過ぎて耳に2つ目と3つ目のピアスあけて喜んでるおれ。かつての栄光なんてねえし、人生最高の瞬間なんて感じたことねえよ。ひとり酒以外の酒の記憶なんてのもほとんどねえよ。でもさ……この主人公には感情移入しちまうんだ。同じくらいの年齢で、それでも自由が、自由が欲しいんだ。まだおれは若いんだ、青臭いんだ。ドラゴン追いかけてんだよ……心のどっかでは。
 正直なところ、シリーズ(?)的には『ホット・ファズ』の方がよくできてるぜって感じはするよ。焼き直しの感もあるよ。そんでもさあ、このおれという人間の世代というところからすると、なんとも痛烈に響くものがあるんだよ、『ワールズ・エンド』。今こうして酔っ払って書いてても、なんとも言えねえ気持ちになるんだ。そういうところを突いてくる作品なんだよ。単なるコメディじゃねえし、かといって追憶と感傷ばかりを突いてくるわけでもねえ。とうぜん面白え。でも、面白えばかりじゃねえんだ。この歳になって、このタイミングで観るに、やっぱりなにか特別な感傷が顔を出してくる、おれにとってはそういう一作なんだ。まったく、そういう映画だったんだ……。

>゜))彡>゜))彡>゜))彡