リチャード・ブローティガン『ピル対スプリングヒル鉱山事故』を読む

 ボート
お 美しきは
みずから罪の森にすむ
狼男であった
わたしたちは謝肉祭に
狼男を連れていった
まわるフェリス観覧車を見て
狼男は吠え
  はじめた
電気仕掛けの
緑と赤の涙が
毛むくじゃらの
両頬を伝って
流れおちた
狼男は
暗い水の上を
流れ去る
ボートのようにみえた

※巨輪のへりに乗り物をぶらさげた設備

 おれはこの詩を読んで「フェリス観覧車」というものにいろいろの想像を膨らませた。おれの知っている、あの桜木町駅のホームから見える、ありきたりの観覧車ではない観覧車。おれの知らない、巨輪を用いた特殊な、特別な、観覧車。いったいどんなものだろう。パンジャンドラムみたいな代物だろうか?
 おれは手のひらサイズの携帯端末ですぐさま調べた。
wikipedia:観覧車

観覧車(かんらんしゃ、英語: Ferris wheel)

 ん?
wikipedia:ジョージ・ワシントン・ゲイル・フェリス・ジュニア

観覧車は英語ではFerris Wheelという。Ferrisは彼の名前に由来している。

 ふつうの、観覧車のことじゃないの。なのにわざわざ「フェリス観覧車」と訳して、訳注までつけるの。なんでさ。おれの空想の「フェリス観覧車」は、大勢の女学生を乗せて、「ごきげんよう」と言いながら、回り続けて、やめることを知らない。とくべつの巨輪があって、とても奇妙な方法で乗り物がぶらさがっているんだ。おれの「フェリス観覧車」……。
 おれの好きな詩は次の一編だった。

 自動詩撰

飢えにせかれて いつもと違う
強制的な独身者の夕食を今晩とった
中華料理にするか それとも
ハンバーガーにするか 決心しなければ
ならないトラブルを抱え込んだ 神よ
ひとりで夕食をとるのは嫌です まるで
 死んでいるのと同じです


>゜))彡>゜))彡>゜))彡