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さて、帰るか

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雨音の世界に酔っぱらいのカラオケが響く。ときおり車の通る音が聞こえる。そろそろ潮時だ。おれはそこまでアルコールに依存しているわけじゃあないから、デスクの引き出しにスコッチを隠し持ったりはしていない。あればいいな、と今思った。ためしに引き出しの中をあらためてみようか。……なぜかジョン・アーヴィングの『熊を放つ』の上巻だけ出てきた。おれはそこから一節を引用するつもりは、ない。

絶大な信頼を置くシュールストロムが目をつけた選手に、球団はすぐには獲得にゴーサインを出しません。長くて3年、その選手を追いかけさせて実力や性格を見極めるのです。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150420-00000003-nkgendai-base&pos=1

 

3年も見極めるのだ、カープは。 なるほど、優良外国人選手を獲得できるわけだ。もちろんシュールストロムの眼力あってのことだ。

しかし、3年もあれば野球選手だって変わってしまう。もしかしたら、なにかに開眼してメジャーに昇格してしまうことだってあるかもしれない。それでも、長くて3年見極める。今のカープは良い助っ人が多い。今のカープは最下位である。

ヤクルトでペタジーニが全盛のころ、あとからラミレスが入ってきた。解説がラミレスこそが本命であったというようなことを言った。ラミレスは地味な印象だった。寡黙で、静かで、暗いバッターだと思った。ホームランを打ったあとのパフォーマンスなんてのは見せかけに過ぎない。なにかがラミレスを暗くしているのだと思った。おれにはその後のラミレスの長い活躍は想像できなかった。

日々の衰え、近づいてくる人生の終焉。おれと同い年の選手がもはやロートルだ。まったく信じられない。高橋由伸が日吉の藤山記念館で涙ながらの入団記者会見をしているとき、おれは倫理のレポートを書いていた。

その藤山記念館に教室があって、授業があったというのはおれの記憶違いだろうか。おれは土曜の一限に開かれる一般教養の心理学にかよっていたような気がする。講師が開口一番言った「フロイトだのユングだの夢占いだの星占いだのやりたいやつは、A大学かJ大学にでも行ってくれ。ここはひたすらにマウスで実験する認知心理学の場なのだ」と。

おれは心理学を専攻するつもりもなかったし、星占いを専攻するつもりもなかった。おれはただ、土曜日の朝に外出して、昼には授業をおえて東横線に乗り、桜木町まで行くのが目的だった。今では東横線の駅があったなんて、みんな忘れてしまっただろうが。おれも東横線の乗り心地は忘れたが、京急みたいな狂気的な速さはなかったな。

こないだの土曜日でようやく本年1月からの完全週休1日制が終わりをつげた。あまりに突然のことだったので、競馬に小銭を賭け、酒を飲んで過ごした。翌日の日曜日もそのようにした。夕方から安いスコッチを飲み続けていると、夜になるとともかく水が飲みたくなる。おれはたくさんの水を飲んだ。水道水で満足できるなんて安いものじゃないか。もっとも、おれは水道代を払わなければいけない。

おれは水道代を払わなければいけない。ガス代を払わなければいけない。電気代を払わなければいけない。なにより家賃を払わなければいけない。もうごめんだって思うこともある。いつもそう思っている。そこの不安さえ取り除かれれば、おれはもう精神科に通うことだってなくなるし、双極性障害とそれがもたらす不安心からも解放されるだろう。

もっともこのところ、おれ自身が双極性障害かどうか怪しいものだと思っている。おれの精神を安定させているのはジプレキサだが、おれの躁転を抑えているのではなく、べつのところに作用しているように感じる。いずれにせよ、効いているのだから文句は言うまい。薬価に関しては別だが。

というわけで、双極性障害で天才のおれは財布の中身を気にしながら100円ローソンで晩飯を仕入れて雨の中を帰るのだ。防水の靴でずったらずったら歩いて帰る。もし、おれが雨の日も自転車に乗ることができたならば、ドゥラメンテのようにファンタスティックな横滑りをしながら帰れたものだが。