ベトナムフェアだかベトナムフェスを神奈川県庁あたりでやっているというので行ってみた。
(フェスタが正しい)
ランタンが光るというので暗くなってから行ってみたが、腰が抜けるほど光量不足だった。電力を使いすぎると可燃物の入ったペットボトルによるテロルが吹き荒れるのかもしれない。本当は白熱球を使うとか、火を使う(燃えるだろ)とか、そんなところだろう。
フラワーアートというのもあったが、こちらもとくにライトアップされているというわけでもなく。小さな子供がともかく中に踏み込んで触りたがるので、親は大変そうだった。「これはアカン、ぜったいアカンやつやから!」という声も聞こえた。そうだ、世の中にはアカンやつとぜったいアカンやつがあるのだ。
県庁が開放されていたので屋上に行く。
これが神奈川県知事霊廟である。歴代の県知事の遺体が奉られている。
歴代の県知事の遺体は足を町田に向けられており、代々の県知事は町田奪還の志を受け継ぐのだ。ここ、かながわ検定に出るところだから。
考えてみれば、おれは人生のほとんどを神奈川で過ごしている。今年、神奈川県の外に出たのは10回以下だろう。5回もないかもしれない。
あとは歩行者天国になっているところにたくさんのヴィエトナム屋台が出ていた。なぜかトルコのケバブも混ざっていた。
マンゴービールというのがあって、なにかと思えばシンハー(ベトナムじゃないよな)半分にマンゴーのスムージー半分という代物だった。アルコールとしてはまったく物足りないが、飲み物としておいしかった。あとはなにか、かたいフランスパンのようなものになにかが挟まったものを食べた。フランスパンのようなものというあたり、やはり元宗主国の文化の名残だろうか。そういえばおれは小さいころから父親に「アジアで一番強いのは植民地にされたことのないタイである。次に強いのはアメリカを退けたベトナムである」と聞かされて育ってきた。実際のところは知らない。
タイとベトナム。ベトナム戦争。スコシタイガー作戦。かたいパンの次にガパオ・ライス(ベトナムか?)を食った。そのあと女がフォーを食べたいといった。また屋台に並んだ。並ぶほど人はいなかった。フォー売りによると、800円の「全部のせ」が今なら500円という。それにした。それを二つくれ。「汁と焼くのとあるがどうするか」というので、一つは汁、一つは焼きにしてくれといった。
最初はおれが汁のフォーを持った。「全部のせ」の一つであるふわふわ卵がおいしい。ホビロンの屋台はなかったが。スープもあっさりとしていてなかなかいい。が、女が交換しようというので、おれが焼きフォーを食うことになった。理由はすぐにわかった。油っこく、肉ばかりなのである。これはすごいと思った。暗がりでよくわからないが、肉また肉である。それも「全部のせ」だから色々の肉である。つくねのようなのから、モツのようなものまで、ともかく色々の肉が口に入ってくる。一方でフォーはその合間にちょっと出てくるだけである。野菜の要素はゼロだ。夜店の屋台の焼きそばというものを考えてもらいたい。肉など一かけらでも入っていればいい方である。麺を食うものだ。ところがこれは、感覚的に肉8割という具合なのだ。こんなものは初めて食った。肉、また肉である。さらに汁のフォーの肉を女がちょいちょい押し込んでくるのである。何肉かわからない肉に、おれは打ちのめされた。いくら八木がカープ絶対殺すマンだといっても、黒田、前田で連敗することはないじゃないの。そのくらい打ちのめされた。今後の人生で屋台の焼きそばにいっさいの肉が入っていなくても、一生分か二生分それは食ったから、といえる。イッパイタイガー。おしまい。