たとえばここに地獄があって

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たとえばここに地獄があって。おれは凍えていて。うっかりすると心臓がどろりと身体の中からずり落ちそうな気持ちで、もたもたとしか歩けない。朝、ベッドの中から出るのが苦痛でしょうがない。脳のなかをどうにかする薬を飲んだところで脳のなかはまるでよくならない。地球の底への大穴が開いていて、そこに引きずり込まれるような気分だ。おれはなんの取り柄もないし、手に職があるわけでもない。おれは福祉の助けを借りるほどダメにはなっていないし、おれの選択肢は自殺くらいしかない。年を越せるのだろうか、よくわからない。不安感ばかりが増して、おれは心臓を取りこぼさないように背中を丸めこんで身体を動かさないようにする。すべてがこぼれ落ちていく。これが人生の敗北者のありさまだ。そして、遠からず訪れるのが人生の敗北者の終わりようだ。おれの顔には表情がない。喜びの表情もない、悲しみの表情もない。ただぽかんと口開けて、おれが終わっていくのにそれを見ようともせず、視線の先にはなにもなく、空は晴れていたとしても、おれの目には世界が壊れてくれないかという歪んだ妄想しか映っていない。おれには世界を壊すことができないので、世界が自壊してくれないか妄想するしかない。道行く人々にもそれぞれの人生があるのだろうが、おおよその人間は安全圏のなかにいて、すいかにかける塩のように、ちょっぴりと不安を抱えている。全身不安感のおれとは違う。おれがたまに電車に乗ってみると、たくさんのスーツを着たサラリーマンがいる。かれらにはかれらの不安があるかもしれないが、スーツを着たサラリーマンの多くが抱えているのはちょっぴりした不安だ。おれのように心臓がどろりと流れだすことはない。おれは無能で、その上病気だ。おれは狂っているが、精神科医がいうには、その境遇ではだれもがそうなるという。そんな境遇に行き着いたおれの責任だ。スーツを着て働くことのできなかったおれの責任だ。おれの無能が、おれの怠惰がそのようにした。おれはけじめをつけなければいけない。終止符を打たなければならない。ただ、おれは怠惰で勇気がないからそれができない。だから絶対他力がおれの息の根を止めるのを待ち焦がれている。早く殺してくれ、早く殺してくれ。もうこの地獄にいるのはまっぴらだ。生まれてきてから、ステージがあがるごとに心配と不安ばかりが増していった。楽しいと思ったことは一度もない。これから何がしたいということもない。もう静かになりたい。身体を丸めたまま未来永劫動きたくない。

今週のお題「今年買って良かったモノ」

日頃使っているルイガノMV-1のブレーキ鳴りがひどく、ぜんぜん収まる気配がないのでブレーキシューを交換した。Amazonで一番安いものを買った。思えば、一回も交換したことがなかった。おれはVブレーキの調整が苦手だ。結局、ワイヤーの固定位置の変更までしてなんとかした。おれはVブレーキの調整が苦手だ。古いブレーキシューはヒビが入っていた。制動に問題はなかったが、もっと早く交換するべきだった。その後の調子はすこぶるいい。停止するときに「キュッ」と音を出すだけだ。それが心地よい。

ALLIGATOR(アリゲーター) Vブレーキ用ブレーキシュー ナット付 VB-620 ブラック