年末年始のテレビ雑感

 よくわからないが、年末のテレビ恒例行事としてボクシングというものが成立してしまったようだ。かつては、キックボクシングや総合格闘技に選手を取られるような形だったボクシングが、逆に唯一のコンテンツとして残っているというのがおもしろい。もちろん、ボクシング界にとってはありがたくない「亀田」の存在を抜きにしたら語れないのかもしれないし、なにがどう転ぶかはわからない。
 そしておれはボクシングを観た、わけだが。わけだが、なんというか、総合格闘技のブームに比べるとテンションはあまり高くない。年末に観る圧倒的な暴力(といっては選手、関係者に失礼だろうが)という面では、やはりボクシングに物足りなさを感じてしまう。かといって、海外の総合格闘技を観るために有料チャンネルに入るなり、ニコ生に金を払うなりという気はしないのだから、薄っぺらいミーハーの戯言ではある。
 そんな中で観たボクシングの三つの中継だが(30日・フジテレビ/31日・TBSとテレ東)、MVPを選ぶとしたら、敗れたとはいえ、やはり天笠尚ということになろうか。それともやっぱり井上尚弥かな。よくわからない。しかしまあ、観ていて興奮したのは天笠なのかもしれない。
 なにせあの……といえるほどの知識はないが、ギジェルモ・リゴンドーというビッグネーム中のビッグネームらしき選手、さすがのテレビも圧倒的に王者有利を伝える中での試合。二度のダウンに大番狂わせを予感させる……も、やはり圧倒的に打ちのめされてTKO。印象的だったのは、解説だった内藤大助(たぶん)が、ダウンをとったあとに、「一緒に休んじゃだめだ!」を連呼していたこと。天笠の試合に勝ったような喜びようは、素人目に見て「喜ぶのは当然。でもまだ終わってないし」みたいなところはあったが、そこで止めをささなきゃいけないんだってのは、やはり世界王者になった人間の実感なのかな、などと(止めをさせたかどうかわからないが)。
 井上尚弥はただただすごくて、「なんなの、これ」という感じだった。いくらベテランとはいえ、こちらも大物王者なんでしょ? 井岡一翔などを霞ませる一戦に見えた。村田諒太は正直よくわかりません。
 ボクシングはこのくらいにして、あとはなんだろうか、お笑い番組だろうか。おれは普段テレビというとアニメの録画を再生する機械になってしまっているので、たまに見入るお笑いが面白くてたまらない。とくにネタがたまらない。たまに飲むいいスコッチのように、腹に染み渡ってくる。検索ちゃんネタ祭りにしろなんにしろ。
 とはいえ、一番年末で笑ったな、というのは『クイズ☆正解は一年後』という番組だった。番組はだいたいタイトルの通りで、一年前に収録した一年を予想したクイズとその答え合わせというものなのだが、その中に「笑っていいとも!」最終回のタモリは何を言うかという問題があったわけだ。それに対する野性爆弾川島邦裕の回答がすごかった。ピエロ装束のタモリ演じるコージー富田が「この肉体には飽きた」といってバタリと倒れ、手前に寝ていた白人少年がむくりと起き上がり、タモリのサングラスをとってつけ、「It's show time!」と叫ぶのである。書いたところで面白さは伝わらないが、こいつはむちゃくちゃに面白かった。そのあとの川島のコメント「このころは毎日カラスばかり食べてたので一番頭がおかしかった」というのもよかった。コボちゃん4/1予想も一番に冴えていた。おそろしいモンスターだと今さらながらに思う。
 あとはなんだろうか。ガキの使いの「笑ってはいけない」。これは録画していたものを早回しで観たが、毎度のものというところだろうか。振分親方と毎度の肛門への酸素注入で大笑いしたかと思う。紅白歌合戦は録画もせず、ただiPhoneのアプリを入れて(登録した演者の出演が近くなると知らせてくれる)、気になった2、3組を見たくらい。でもって、椎名林檎が抜群にかっこよかったなあと、それくらい。あとはチラチラ見たけど、連続テレビ小説大河ドラマの宣伝みたいなのばかりやってるなーと。あと妖怪ウォッチとか? それと、おれはAKBのようなものにまったく興味なくずっと生きてきてしまったな、と妙な感慨を抱いた。まあ生身のアイドルに興味はない。2次元の方がある。というわけで、「物語」シリーズを録画したのだが、確認してみたらどこにもない。すわ録画失敗かと同様したが、なぜか『ヤマノススメ』の中にまとめられていて、まあこれはどうでもいい話。
 と、そんなところで、とくにどこに行くでもなく、何をするでもなく、のんべんだらりとテレビ見て正月を過ごしております、と。おしまい。