そごう美術館『バロックからバルビゾンまで 山寺後藤美術館コレクション展』に行く


 タダ券があるというので女についていった。昔、バロックロココという馬がいたと思う。あと、マイネルバルビゾン。そうだ、おれにはあまり興味がない。おれはたいていのことに興味はない。
 バロックからバルビゾン。おれが少し興味を持ったのは前半の方だった。キャンバスに油彩でここまでやりまっせという職人芸のようなものがある。作者経歴などいちいち解説があるが、親がなんらかの工房をやっていたりという例が多い。やはり職人の技かと思う。
 なかでもいちばんすげえと思ったのは、エドワード・マシュー・ウォード(http://en.wikipedia.org/wiki/Edward_Matthew_Ward)という人の《リア王コーデリア》というやつで、コーデリアの髪の部分やマント、画面左の静物など、思わず手で触れてみたくなったりしたものだ。この執拗さというのはなかなかにくどく、そして圧倒的なところがある。「絵は薄らぼんやり描くもんじゃないよ!」という声が聞こえてきそうだ。実際に聞こえたきたら狂人だが。
 ところでウォードさんは晩年、「お前の絵は時代遅れじゃね?」と評判を落とし、失意のうちに自殺したとあった。今回の展覧会、なにか自殺した画家が多かったように思う。どこかで「自殺した芸術家展」というのでも開いてみたらどうだろうか。古今東西、作品集めにはあまり困らなそうな気はするのだけれど。開催するなら正月がいい。
 あとはコローやジョン・エヴァレット・ミレー、クールベなんかがあったと思う。あったというだけで、これとってすげえというのはなかった。言っておくが、おれはミレーの《オフィーリア》が死ぬほど好きで、実物を目の前に持って帰ろうかと思ったくらいだ。でも、今回見た肖像画はそうじゃなかった。まあ、そういうものだ。あとはそうだ、シャルル=エミール・ジャックという画家の《月夜の羊飼い》というのがわりと好みで、ちょっと持って帰ろうかと思ったくらいか。なにせおれは未年の男だ。そんなところだ。

 関係ないが、そのあと2階上でやっているスヌーピー65週年記念展を見た。おれはディズニーのネズミが大嫌いなのだけれど、スヌーピーは大好きだ。とはいえ、原作に触れたことがあるわけでもなく、「兄弟がいるのか」とか「ウッドストックみたいのが何人もいるのか」などと初歩的なところで驚いた。まあ、そういうこともある。