バカなナチがバタバタぶっ殺される映画『フューリー』を観るのこと

1 [U][C]激怒, 憤激;激情

furyの意味 - 英和辞典 - コトバンク

「『フューリー』観たんだって? 硬派な戦争映画っていうか、戦場映画だって話じゃないか?」

「たしかに、そうなんだが、観終えた後はいささか興ざめという感じがしたな。少数のヤンキーが大多数のSS、まあ練兵度も低い疲弊した末期の武装SSということなんだろうけど、そいつらを大量にぶち殺すんだ。冷酷でマヌケなフリッツどもの群れをとことんぶっ殺して愉快愉快って話さね」

「それは言い過ぎなんじゃないか? 味方の米兵も死んでいくし、ティーガーの脅威だって描かれてるんだろ? それに、最後圧倒的に追い詰められてるのは主人公側なんだろ?」

「それどころか、米兵の略奪、強姦みたいなところまで描いてるさ。ティーガー無双もあったしな。まあおれくらいの年代のさ、昭和の子にとっての憧れといえば大和、ゼロ戦、タイガー戦車だからな。ああ、たしかにそういう面も描いていたさ。おっかなくて残酷で救いのない戦争だ、戦場だ、そういう意味で反戦映画だ。でも、ラストの戦いが全部興ざめにしちまうんだ。実際の曳光弾があんなにビームライフルみたいなのかどうかしらんが、そんなところまで気になっちまう。そんなにゾロゾロ出て行くな、精確に、見えないところからパンツァーファウストを食らわせてやれ! って具合だ」

「どうもドイツに肩入れしているようだね」

「当たり前じゃあないの。日独伊三国同盟の子だよ。まあ、ここんところソヴェートは好きになったし、街道上の怪物っつったらクリメント・ヴォロシーロフから名前をもらった……って、そんなのはどうでもいいか。ともかく、結局物量であんたらが勝った歴史は重々承知している。ドイツの、日本の行った残虐行為も知っている。だから、映画の中で負けるのも知ってるさ。それでも、そこまでやんなくてもいいんじゃないのって思うよ。そりゃ史実でも“バルクマンの曲がり角”みたいな話だってあるだろうさ。ああ、けどやっぱり同じものを見せられてる……って思っちまうんだ。今の国威を発揚させようって大日本帝国海軍だの陸軍だの映画が観たいかと言われりゃあんまりそうでもねえし、観てねえけどさ」

「それで結局、面白かったのかどうか、どうなんだ?」

「むつかしいところだ。『プライベート・ライアン』以後の戦争映画のラインは当然のことながら上回っているし、戦車道とは言わんが(Blu-rayの宣伝に『ガルパン』入ってたな)、戦車戦とはこういうものだという一部は見せてくれたように思うよ。実際のところどうかは知らねえが、そういうリアリティはあるんじゃないの。ブラッド・ピットもまあ『イングロリアス・バスターズ』ほどじゃないけどカッコ良かったけど、まあ想像の範囲内というかな。なにかこう、この一撃、みたいなシーンはなかったかな。『プライベート・ライアン』の冒頭だとか、ハートマン軍曹の演説だとかな。そんでもまあ、いくらか軍事兵器好きですとか、戦争もの好きですって要素がある人間は観ても損はないんじゃないの、ってところかな。戦争の憤怒、戦争への憤怒は感じられたよ。ちょっとはさ。うん。あと、あれだ、ふっと空を見上げると凄い数の飛行機が右から左へ向かっていて、左側から迎え撃つ飛行機が来て散開するんだ。たぶん右が連合国側だ。あのシーンはちょっと好きだな」
1/72 WW.II ドイツ軍 ティーガーI 後期型 第510重戦車大隊 1944年 12月

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