富山和子『日本の米』を読む

日本の米―環境と文化はかく作られた (中公新書)

日本の米―環境と文化はかく作られた (中公新書)

 たった一粒の種籾から二〇〇〇粒、三〇〇〇粒もの米を実らせる稲。二年で四〇〇万、三年で八〇億、余念で十六兆――。こんな作物は他にはない。「一粒万倍」といわれるこの「稲」という植物にはじめて出会った先祖たちは、どれほどの驚きと、喜びと、そして敬虔な祈りとで、それをこの国土に根付かせてきたことであったろうか。

 そんなに曽呂利新左衛門みたいにうまくいくもんかは知らないが、言われてみれば米はすごい。米のこの増え方のよさはアダム・スミスもほめたらしい。すごく増えるうえに、タンパク質の含まれ具合も絶妙らしい。米すごい。
 米すごいので、古代から日本は米のために国土を造りかえていった。川の流れを変えた、土を入れ替えた、土木の技術があった。検地があって農民だって数に強くなった。
 ともかく米でどんどん日本人は増えていった。古代、中国大陸とインド亜大陸を除けば、世界最大級の国だったという。米の生産は余剰を産み、富となっていった。
 なるほどなあと思った。言うほど小さくはない島国だけれど、やっぱり小さい島国、しかも東の果てにある。それがそれなりの独自の文化、文明を築いてきたこと。黒船到来以降一気に近代化に成功してしまったこと。その背景には米というたまたま日本の気候に合ってくれた「一粒万倍」の蓄えがあったのかもしれないな、と。そりゃそもそも南方系の植物だから、北の方は苦しかったし、ある時期には飢饉だっておこった。幕末は慢性的に食べ物が足りなかったとかいう話もある。『広益国産考』読めって話になったりした。それも、農民のいくらは本を読むことができたわけで、やはり米の生み出す余剰のおかげかもしれない。歴史の中で国としての総合的な蓄えの大きな部分を占めていたに違いない。米がなければ、この国が先進国の仲間に入ってることもなかったろう。
 ……などというおれの主食は小麦粉(菓子パンとお好み焼き)であって、まあこの国も長くはないな。おしまい。

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【精米】北海道産 白米 きらら397 10kg 平成27年産

【精米】北海道産 白米 きらら397 10kg 平成27年産

……そういうおれも米を主食にしていたことがある。おれはかための米が好きで、コシヒカリは好きになれない。これとか食ってたような気がする。

水の文化史 (中公文庫)

水の文化史 (中公文庫)

……『日本の米』は会社の本棚にあったのを昼休みにさらりと読んだが、けっこうの昔にも読んだことはある。中学受験前に父親が「たぶん富山和子とか出るから読んでおけ」と言ったのだ。それで、日能研のテストか本番か忘れたが、川関係の本から出たのでたいそうおどろいた覚えはある。当時流行っていたのかな。