『トゥモロー・ワールド』を観る

 『トゥモローランド』という新作映画の宣伝を見て「あ、『トゥモロー・ワールド』ってあったな」って思って、観てなかったので借りてみた。
 舞台は近未来のイギリス。原因不明で人類に子供がいっさい生まれなくなって18年くらい経つ。世界各国は暴動やらなにやらで破滅したことが示唆され、なんとかイギリスだけ国家の体をなしているという設定。そのイギリスもファシズムのような統制社会で、世界から押し寄せる難民を収容所にぶち込んでいる暗黒社会。そしてそれに反するテロリストたち。そんな世界。雰囲気や映像は美しい。
 まあ、なんだ、極端な設定なのでべつに少子化日本の未来の姿がとは言わないが、子供がまったく生まれなくなった人類というものの精神状態はどうなるのだろう? 社会はどうなるのだろう? そういうあたりは想像力を刺激されはする。『トゥモロー・ワールド』のイギリスでは、抗鬱剤と自殺剤を政府が配給しているというが。
 というか、他人事ではないか。おれはかなりの確率で結婚しないだろうし、子供をもうけることもない。おれはおれ一人の『トゥモロー・ワールド』を生きるということになる。そのような人間になんの未来や希望があろうか。……うーん、テロリストになったりするんだろうかね。それもあるかもしれない。とはいえ、このおっさんはドローンを買う金もない。まあ、孤独と踊りながら死んでいくしかないだろう。おれはおれの目の前のおれの命を支えるので精一杯で、人類の子供を愛する余裕なんてありゃあしないんだ……。