世界中がヨハネスブルグ『エリジウム』

 「及第点!」(cv.荻野可鈴)という感じのSF作品。結論からいうと。
 監督はニール・ブロムカンプ(おれはこの名前を覚えるのが苦手で、つい「ニールカンプ」と言ってしまう)で、『第9地区』、『チャッピー』を先に観て、間にあったこいつを観た。なんとなくハリウッドややありがち系かな、と思っていたら、そうだった。だからなにかこう、こりゃあすげえというのはなかった。ないけれどもつまんなくはねえよ、おもしれえよ。というあたり。このあたり、なかなか難しい。ただ、『第9地区』、『チャッピー』にみられたような、「現実社会を風刺する感じ」と「監督、おまえこういうの好きだな」って趣味が合体した奇妙な味わいは少なかったというわけだ。

 ……とはいえ、この『エリジウム』の世界、世界中がヨハネスブルグでヒャッハーなわけだ。この建物は横浜ランドマークタワー……5号基? それでもって、大金持ちの一部のみがスペース・コロニー「エリジウム」で優雅に暮らしているという設定。冒頭の廃墟風景とか、ああやっぱり監督こういうの好きなんかなーと思わせる。そんななかで生きる底辺(みんな底辺なんだけど)労働者の主人公が、工場の事故で余命5日。なんとかエリジウムの「病気も怪我もなんでも治っちゃうマシーン」(一家に一台!)を使おうと、宇宙を目指す……。
 それでもって、詳しくは書かないが『チャッピー』に通じるような、ややサイバーパンクな部分もあり(『JM』とも言える)、「やっぱり監督こういうの好きだろ」という強化外骨格に、日本刀を振り回し、手裏剣を投げる悪者(「ニンジャ」好きだな)。こいつはもう悪くないぜ。
 そんでもなんだ、なんかね、まあ、主人公が最後の選択をするのに具体的なスイッチが必要だったのはわかるけれども、あの母子は取ってつけたというとなんだけれども、ややごちゃついたかなという印象はある。代案はない。
 てなところで、まあ満足の出来というところ。100点満点で60、65点というくらいか。次は監督かどうか知らんが『エイリアン』シリーズらしいが、P.K.ディックあたりのなにかを撮ってもらいたいな、などとも思った。おしまい。

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