親から与えられたブルーハーツ、あるいはベスト3

 もう内容は覚えていないが、アニメ『ローリング☆ガールズ』でブルーハーツの楽曲がカバーされていた。おれは世界の片隅にひっそり暮らしている、ただのくたびれた一人暮らしの中年なので、机の上のミルクをこぼしたところで、自分で拭き取らなければいけない。ナイフを持って立っていたら通報される。切り裂きジャックになる気力もない。それだけだ。
 とはいえ、「ブルーハーツええなあ」と思って、なにやら最近出たというベスト盤なんかを聴いてみたりした。そもそもおれだって思春期にブルーハーツを聴いてたんだ。
 ……とはいえ、そのCD、まだCDというものが出始めだったころのCD、自分の小遣いを貯めて買ったとか、万引きしたとかいうことなどなく、ある日父親が買ってきたものだった。「ブルーハーツというのは歌詞がいいのである」というようなことを言ったと思う。今思えば、崇拝する吉本隆明吉本ばななブルーハーツだったのではないだろうか。
 というわけで、我が家のCDコンポの近くにはクリスマスソング集、ブルーハーツ植木等のスーダラ節(これはおれが買った)だけが並んでいる時期があった。反抗期もクソもない。とはいえ、じきに自分でCDを買うようにもなった。なったけれど、いつしかブリットポップや軍歌を聴くようになって、ブルーハーツのその後や、ブルーハーツのような邦楽バンドというものには進まなかった。けど、「ブルーハーツええなあ」というのはどこかにある。
 唐突だが、(すべての曲を知ってるわけじゃないけれど)ベスト3なんか考えてみよう。順不同。

皆殺しのメロディ

 ノリのよい感じ、勢いのある感じ、マシンガンのリズムを感じる。少年は狼になったが、おれはならなかった。ただ、われわれ人類はバカだろうし、過去現在未来バカなのだろう。そこには真理があって、そういうどこかしら醒めたところが見え隠れするのがブルーハーツのよさだと思う。

終わらない歌

 おれはクズだし、くそったれどものくそったれな世界を愛する。ゆえにこの歌も愛する。笑える明日というのが来るのだろうか? おれにはわからない。……される日々が続くばかりのような気もする。

TOO MUCH PAIN

 急にノリの違う曲だが、この歌から広がるイメージというのはたいへんすばらしいものがある。おっさんになってから人生はみだしたおれには遠い世界の話のようだが、そこに何かしらの気配があって、この曲はそこに誘ってくれる。ゴーストハックされたように、おれもそういうときがあったような気にさせてくれる。それは、おれがまだ10代も半ばになろうかというときからそうだった。それだけ力のある曲だと思う。

……って、3曲というのは厳しいけど(「少年の詩」「月の爆撃機」……)、まあいいか。おしまい。