映像作品のノベライズとは? 〜T・H・クック『テイクン』〜

テイクン〈上〉 (竹書房文庫)

テイクン〈上〉 (竹書房文庫)

テイクン〈下〉 (竹書房文庫)

テイクン〈下〉 (竹書房文庫)

 トマス・H・クックといえば『なんとかの記憶』とか『なんとかの記憶』とかハズレのない作家(おれには記憶がないようだが)という印象が強く、「トリック特化でもハードボイルド特化でもない海外ミステリーが読みたい」という人がいたら、とりあえず勧めて失敗はないような気がする。おれのなかでは、SFにおけるロバート・J・ソウヤーと同じような位置にいる。安定、安心のブランドだ。
 で、本棚でそのクックの本が目に入ったが、どう見てもSFなのである。クックがSFを書いていたとはしらなかった。装丁や写真が載っており、映画かなにかのノベライズのようだが、クックならハズレねえだろうと思い、手にとってみた。あとで気づいたが、タイトルの上に「スティーブン・スピルバーグ」の名前がどーんと載っていた。

 で、原作は映画ではなくテレビシリーズらしい。日本では2002年にWOWOWで放送していたらしい。おれはWOWWOWとも海外ドラマとも縁遠いので聞いたこともなかった。内容は……宇宙人もの。遭遇もの。リトルグレイ(……20世紀のキャラクターデザインで1等賞なのはこいつなんじゃないだろうか。たとえばディズニーのネズミより人々の頭のなかにあるんじゃないか? 関係ないけど)にロズウェルに、というような。まあ、映画『宇宙人ポール』からも明らかなように、スピルバーグは本当の情報を元にしているのだけれど。
 でもって、ノベライズ。これがねえ……正直に言ってつまらない。「原作ファンなら買い」なのかどうかもわからない。なにかこう、人物が像を結ばない。伏線や仕掛けもあまりなく、淡々とエピソードが連なっていくばかり。三家族の三世代を描くにしても、「こいつ誰だっけ?」感が多く、いちいち人物相関図を見返したりする必要がある。読書のスピードも後半になってもあがってこないところか、下がる一方。これはよくない。しかしこれ、トマス・H・クックだよなあ。クックがこんなんって、あるんだなあ。あと、やけに字が大きくて、上下2冊にする必要あんのかなーとか。
 とはいえ、こいつは(おそらく)おれがはじめて読む映像作品のノベライズというやつだ。なにかこう、これが映像であればそれぞれの人物が際立っているのかもしれないし、シーンのインパクトも大きいかもしれない。なんとなく、そういう予感はする。予感はするが、もうノベライズで読んじゃったし、映画ならともかくテレビシリーズをいまさら借りようという気もしないのだけれど。まあ、なんかそのあたり、映像作品のノベライズってのはこういうもんかとか、表現媒体による差とか、そのあたりはなんか感じたかな。そのくらい。おしまい。

TAKEN <テイクン> コンプリートBOX [DVD]

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