「……そういえば今年の5月2日、カレンダー上では平日ではありませぬか。世の中には10連休にならなかった哀れな働き者たちも多いはず。この期を逃さず行ってしまいましょう、若冲展! きっと普段よりは空いておりましょうぞ。なんという悪だくみ、グハハ!」
行列ダーン!
レペゼン上野、ジャックするのはオレ若冲、弱キックから中パンチへ繋ぐパンチラインはライカ・ジャッキー・チェン! 若冲なめんな!
……というわけで以下は朝早く出たつもりの某美術大学卒業生および某文学部美学美術史学先行中退者による暇つぶしのための高度な美術の会話である。
「若冲のあれ、下書きなし、修正無しの一発勝負だからすごいよね」
「それ、おれ思ったんですけど、若冲って現実をCommand+zできたんじゃないっすかね」
「超能力、それだー」
「それにですよ、ドット絵みたいなのも予見しているし、若冲は高度な未来社会からタイムスリップしてしまった、高度な科学技術を持った生きるオーパーツだったんじゃないですか?」
「だったらcommand+Dで繰り返しもできる」
「そうですよ。それで、将来人類がより新たな方法、すごい顕微鏡とか謎の光とかを当てたら、未来人若冲からのメッセージが解き明かされるというわけです。おそらく地球人類が時間を行き来する方法であるとか、未知の宇宙への扉とか……」
とか言ってたら数時間経っており、われわれ調査員二人は美術館の外にいた。真面目な話をすると、女は鶏などの細密な描き込みと背景の針葉樹の葉の境界がどのように描かれているか気になっているようだった。おれはといえば、「おれは若冲の描く梅がなんか好きだなー。アロハシャツにしたい」とか「『鳥獣花木図屏風』きてたんだ。この右の方の白象の左側の方の木になんかダラっとまとわりついている謎の哺乳類かわいくて好きだな」とか思っていた。まあしかし、《釈迦三尊像》と《動植綵絵》の階はすごかったな。半周したかと思ったら一周していた。ワープか。もちろん、じっくりゆったり鑑賞できるわけもなく、係員さんの「列は作っておりませーん。ご自由に中ほどの見やすい作品からご覧くださーい。最前列の方はゆっくりお進みながらご覧くださーい」という声をひっきりなしに聞かされるわけだが、まあしょうがない。
若冲展は、絵と静かに向かい合う、というものではなく、みんなで一斉に顔近づけて作品を覗き込み、うわぁ、すごいねぇ、と頷き合う、そんな一種のイベント的な空間でした。果たして望ましい美術鑑賞空間かと問われれば是とはしませんが、しかしこれはこれで、一つの時代的ムーブメントでありましょう。うん、お祭りなんだな、これは。
とにかく見たぞ、と満足して、会場を出て。昼飯に牛カツを食べて……
……いかん、精神を乗っ取られているぞ! 危ないところだった。
朝は曇っていたが、出てみると晴れており、日傘を配布していたようだった。
チケットカウンターで70分待ち表示。少なくとも開場時間前に到着しておいたのは間違いではなかった。あと、事前にネットでチケット購入しておいたのも悪くなかった。QRコードでね、ピッとね(「あ、ネット購入の方はいったん販売窓口で券を発行してください」とか言われたらどうしようとかちょっとだけ心配していた)。まあいずれにせよ、若冲展の混雑具合はこんな具合。ゴールデンウィークとゴールデンウィークの中の平日なめんな、という感じ。
そのあとは上野東照宮のぼたん園なんぞに入ったりして。
今が一番の見頃、というわけじゃないけれど、終わったのもあれば未開のもあって。
まあなんとも言えんよね。
おまえもそう思うだろう?
俳句のコーナーが世界からのメッセージボードみたいになってた。ひょっとすると、それぞれの国の言葉での俳句なのかもしれないが。
絵馬なんかも国際色豊か。しかし、外国人観光客は上野の何を目当てに来るのだろうか。いろいろあって逆にわからん。上野公園なんかの乱雑とした感じは日本らしいといえばそうなのだが。
和風のものもある。
置き場所に困っているのかな?
フェイス・オンリー・グレート・ブッダ。
まあいいや、若冲展楽しめましたとも。それでもって、実際のところ昼食は本当に上の写真の店で食べようとしたんだけれども、8人くらいの団体客と1組のカップルが店の外で列を作っていたの断念。
店の名前もよくわからない海鮮丼屋で済ませた。そのあと喫茶店でダベって、アホみたいに眠くなったので京浜東北線を無茶苦茶爆睡しながら帰宅した。
おしまい。
>゜))彡>゜))彡>゜))彡>゜))彡
ゲー、伊藤若冲、前に観てから10年も経ってんのかよ。