虚空と口論する男

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こないだ、昼休みにコンビニ行ったら、交通標識と口喧嘩してるおっさんがいて、交通標識も言い返せないから大変だなとか思ったら、そのおっさんが頻繁にそこらへんうろうろするようになって、いっつも同じ左肩がずりさがったスカジャンに、左手に酒の入ったレジ袋、右手に缶チューハイというスタイルも普遍で、やっぱり丁々発止の口喧嘩してんだけど、相手はもはや虚空であって、半々発止なんて言葉あるんかいなとか思ったりして、それでもきっとおっさんにはわれわれの見えない誰かがいて、そのだれかが特定の誰かか、あるいはおっさんの目にも見えていない幻の声なのかもしれないが、ともかく今日もおれの職場には「なんだこのやろう」、「死ねって言ってるんだろうが」などという言葉が聞こえてきて、ちょっとうるさいからおれのジプレキサでも差し入れてやろうかと思ったけど、ジプレキサは薬価が高くてもったいないし、6月からようやくジェネリックが出るというのでウッキウキで薬局で「ジプレキサのジェネ出てたら、ジェネに変えて下さい」って言ったのに、6月は6月でも出まわるのは下旬だから、来月あるかないかという話で、おれは内心「なんだこのやろう」とか思ったりして、気がついたら街角で缶チューハイ片手に「ふざけんな、いい加減に理解しろよ」とか言ってたりする日もいずれ来るのかもしれないし、来ないのかもしれない。