ドラッグ・ストアで食器洗い用のスポンジと洗濯洗剤を買って店を出たら、目の前をすごい勢いでうす茶色の猫が横切った。
そのとき、おれには全部わかっちまった。全部、全部、わかっちまった。なにって、この宇宙のすべてがわかっちまった。全部だぜ、全部。
石川町、ラブホテル街、エレベータがガクンとなるあのホテル。
コルト・ガバメントがブローバック、ブローバック、ブロークバック・マウンテン。いくにはまだ早すぎる。サインとコサインの間を考えろ。
アサイン、イサイン、ウサイン、エサイン、オサイン、カサイン、キサイン、クサイン、ケサイン、コサイン、そしてノー・タンジェント。
ノー・タンジェント。
あんたには山が見えたのか。
おれには海が見えた。
岸壁の上でまどろむ猫を見た。
水面の反射光。
大きな黒い鳥が突っ込んだ。
弾性に、男性に、惰性に、ダンセイニ卿。
天体による永遠を生きるおれのヴァリアント。ちょっとの変異ではこの不幸から抜け出せない。おれには全部わかっちまってるんだ。
だからおれはこう告げてやろう。「なんでこんな服買っちまったんだ?」って思ったことのないやつとは、仲良くなれないぜ。
まったく、仲良くなれる気がしないんだぜ。