マイケル・ムーア『SiCKO』を観る

 

シッコ [DVD]

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とくに目的もなくiPhoneのAbemaTVを起動させてみたら、やってた。途中からだ。ただ、最後まで観た感じから逆算すると、だいたい観た、といっていいんじゃないだろうか。そう思ったのでメモしておく。

アメリカには国民皆保険制度がない。なぜだぜ? ほかの国はどうなんだぜ。フランス、イギリス、それにキューバまでよろしくやってんじゃん。おかしくね? みたいな感じである。世界最大にして最先進国であるはずのアメリカが、貧しくて保険のない病人を片道切符のタクシーでホームレス収容所の前に捨てていく。9.11の瓦礫処理のために病気になったのに、なんのフォローも受けられない人がいる。グアンタナモアルカイダのほうがずっとマシなケアを受けてる。おかしくね?

それを観ていた日本の子、おれはどう思ったか。第一に、アメリカ怖い、である。とてもじゃないが、人間がまともな精神で暮らしていける国とは思えない。これまたマイケル・ムーア案件ではあるが、油断してようとしてまいと乱射される銃の弾丸に怯えなきゃいけない。そして、たとえ民間保険に入っていても「うち、系列じゃないから」という理由で急性症状がでている小さな子供が病院をたらい回しにされて死んでいく。こんな国に住んでいるのは強靭な狂人くらいのものだろう。ヒラリーかトランプか、とかそういう以前に、もうこれは人の住む世界ではない!

……って、感化されすぎや。誘導され過ぎや。自分でもわかる。というか、おれはもとからアメリカにけっこうな偏見を持っている。ともかく銃が怖い。そして、盲腸になってもちゃんと保険に入っていなかったら処置されないで放置される。そういう国だと、この映画を観る前から思っていた。

だからこそだかどうだかわからぬが、逆に「フランスの上流階級のいいところだけ映してるんじゃねえの」、「キューバの(以下同文)」という気持ちも湧いてくる。そこまでの天国があるのかよ、という話だ。

で、おれの国はどうなんだ、という話にとうぜんなってくる。「かといって地獄でもない」くらいか? いや、やはりアメリカよりマシだろう。もし、これによって国が破綻するとしても、破綻するまで続けるべきだ。破綻したら「これ」全部がなくなって、もっと地獄になる? 知った話か。無責任は承知でそう言ってやる。でも、どうもこの日本、アメリカになっていくような気がしてならんのだが。

まあ、こんな日本でも食いっぱぐれて自殺しか将来がないような人間の言うことだ。おれのようなものは、カナダだろうとイギリスだろうとフランスだろうとどの国だろうとまともに人生を終えることはできない。そんなことわかってる。大脳の壊れた人間の末路は世界共通だ。恐ろしい、恐ろしい。

二つ、興味深かった点。一つは、マイケル・ムーア批判サイトの最大手の運営者が、妻の病気の治療費が払えず、サイトを閉鎖しようとしたときのこと。これに対して、マイケル・ムーアは匿名で1万2千ドルの寄付をした。サイトは復活した。そして、その様子をおれが知ってるということは、この映画に映したということだ。なんともいえぬひねくれたパンチだ。もう一つは、いろいろ仕掛けのあるエンドロールで、故カート・ヴォネガットに感謝の意を表していることだ。

そうだ、おれはアメリカを狂人の国といったが、そんなことあるまい。マイケル・ムーアにしても、ヴォネガットにしても、ええと、ブコウスキーにしてもP.K.ディックにしてもジェイムズ・エルロイにしても、まともな人はいっぱいいるじゃないか。え、まともじゃない? まあいい。しかしまあ、今のところアメリカには生まれ変わりたくないな。できることなら石油王の子供に生まれたい。ああ、石油文明が終わるまえに転生してやるとも。以上。

 

 

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