『空気人形』のペ・ドゥナ

空気人形 [DVD]

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 『空気人形』という映画があったのは知っている。ダッチワイフに魂が、という非常に大雑把な内容と、板尾創路が出ていることも。とはいえ、監督が是枝裕和であることもも、業田良家が原作であることも、オリエント工業が協力していることも知らなかった。そして、「空気人形」を演じるのがペ・ドゥナであったことも。
 というか、おれは『私の少女』を観て「ペ・ドゥナのファンです」ということになり、そのわりには『私の少女』一作ではなんだと思い、ペ・ドゥナからたどり着いたのが『空気人形』なのだった。
 ストーリーといえば、冴えない暮らしを送る板尾創路の「空気人形」であるペ・ドゥナが心を持ち、人間のような身体を持ち、レンタルビデオ屋でバイトをし、人を愛するというものである。はっきり言って、いや、言い切れないともいうべきか、奇妙な話である。だいたいにして、「ダッチワイフが人間に」(古い伊集院光のラジオのなにかだ)、というのを描いているあたりで、そうとうにおかしな話である。滑稽といってもいいかもしれない。あるいはシュールか。いずれにせよ、それを演じるペ・ドゥナは……すばらしい。
 『私の少女』でのハードボイルドな感じのペ・ドゥナもよかったが、「空気人形」を演じるペ・ドゥナもいいのである。おそらくは難役だろう。おそらくというか、難役だ。それをうまくこなしている。日本語が拙いのはともかくとして、動きのぎこちなさや、表情の具合など、見事なもんだ。だんだん人間らしくなっていく表情の変化、見事なもんだ。もう、笑っていいのか、泣いていいのかわからんようなシーンも真摯に演じきっている。ますますペ・ドゥナさんのファンになりました、というところだ。
 というわけで、冒頭の、空気人形のビニールの身体に雨粒があたる音がよかったなあとか、そういうところもあるのだけれど、「このペ・ドゥナにメイド服着せた監督ナイス!」とか思いつつも、やはり泣き笑いあって、かといって、やっぱりこれはえらく奇妙な世界で、ぶっちぎってるところもあんなーとか思って、けっこう前の作品だけど、チェックしてない人はチェックしとけよ、という気にもなったのである。ペ・ドゥナ以外にも井浦新とかオダギリジョーとか面白い映画出てるっぽい感じの人たちも出てるしな。

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