貝谷久宜『非定型うつ病 パニック障害・社交不安障害』を読む

非定型うつ病 パニック障害・社交不安障害 よくわかる最新医学

非定型うつ病 パニック障害・社交不安障害 よくわかる最新医学

 おれは双極性障害という病名をつけられている。。医者は「病名をつけるためにやってるわけじゃない」と言っている。おれにジプレキサを処方するために、そして、ジプレキサが合うために「双極性障害」という名がつけられている。おれはそう解釈している。おれはなんらかの脳の病を抱えていて、とりあえず「双極性障害」ということになっている。そういう理解である。
 しかし、ジプレキサはわりと非定型な代物である。バルプロ酸だのリチウムだの、双極性障害にのみ効きますよ、という代物ではない。ゆえにおれは未分類のメンヘルである可能性は否めない。そう、たとえば非定型うつ病新型うつ病、怠け者と間違えられやすいうつ病……。
 そう思って本書を読んでみたが、どうもおれは新型のうつ病というやつにはあまり当てはまらないような気がした。不眠ではなく仮眠、電話恐怖などというところなんかは当てはまるものの、むしろ、旧来のうつ病に近いような気がするし、抑うつ状態の長い、ほとんど躁状態の来ない双極性障害DP2じゃないかという意識は強まった。
 とはいえ、いろいろと勉強になったこともあるのでメモをする。

 旧来の分類法では、うつ病を含めて精神疾患を、病気の原因をもとに分類していました。それは、外因性(脳の病気や内科的な病気、アルコール、薬物などが原因)、内因性(遺伝的・体質的原因)、心因性(精神的ストレスやショックが原因)という分類です。
 一方、DSM-IV-TRは、病気の原因ではなく症状群と薬物への反応から分類します。
 精神疾患の大部分は、原因がわかっていない現在では、病気の症状とそれに反応する薬物から分類するほうが実用的と考えられるのです。

 我が意を得たり! というとなんだが、「おれは双極性障害だからジプレキサを処方されている」のではなく、「ジプレキサがおれを良くしているから、おれは双極性障害という診断名を受けているのだ」という、そういう理合が正しいんじゃないのかというところだ。具体的にいえば、ジプレキサを飲んだおれは脳内の宅間守濃度がほとんど消滅したといっていい。希死念慮はあるが、どこかの小学校に押し入って子供をぶっ殺そうというような想念はまったくなくなったといっていい。おれは社会に適応したやさしい人間だ。たぶん。
 あとはなんだ、これだ。

 非定型うつ病の場合は「鉛様麻痺」という症状があらわれます。これは、まるで手足に鉛がつまってしまったように、体が重く感じる症状です。

 「なまりようまひ」。これはおれが最初の最初に精神科に行くきっかけになった症状だし、たまに朝現れては、会社のLINEに「1時間遅れます」と打つことになる症状だ。こればっかりは鉛様麻痺に当てはまる。だからといって、おれが非定型うつ病というわけでもないのだろうが、「鉛様麻痺」、この言葉はしっくり来る。身体が重くなって動けない。冗談みたいにゆっくりしか動かせない、あの苦しさ。いやはや。
 あとはなんだ、「体を使わないと、心も不調になる」、「マインドフルネスの意識で瞑想する」など、はてな界隈をウロウロしていれば見つかる言葉が出てくるばかりである。生産、団結、反抑圧、いや、運動、瞑想、えーと、睡眠? そのあたりをおさえておけば、あなたはおれのようなメンヘルにならずに済むかもしれない。おそろしい、おそろしい。以上。