ラブホはいいぞ『さよなら歌舞伎町』を観る

 ラブホの一日を舞台とした群像劇。おれはラブホが好きだ。だからラブホが舞台の映画も好きだ。そういう意味でこの作品は好きな作品だ。おれは歌舞伎町という街については足を踏み入れたこともないが、ラブホならある。そうか、こんなふうに足まで使って風呂場の床を拭いているのか、などなど。そういえばおれは一度だけ清掃中の部屋に入ったことがあった。競馬中継を聴くために窓際にポケットラジオを置いたのを忘れて一人ホテルに戻ったら、受付の婆さんに直接行って取ってきなと言われたのだ。部屋はドタバタと清掃中だった。働いていたのは日本人ではなかったが、どこの国の人かはわからなかった。そして部屋は何事もなかったように整えられ、次のカップルを迎えるのだろう。何事もなかったような顔をして、ラブホの部屋の中では何事かが行われている。明るく健全な何事かもあるだろうし、そうでない何事かもあるだろう。その人の人生の赤裸々で重要な切り口をさらけ出す場所といいだろう。この映画もそういう映画である。従業員、そして客。従業員と客。いろいろの関係。決して大きな話はないが、それぞれの人にとって大きな話がある。われわれはラブホテルの客だろうがそうでなかろうが、それぞれ大きな話を持っている。たぶん。

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これは同じ監督の作品かな。