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あなたの「゜」はどっち回り? 『左右学への招待』

 

左右学への招待 (知恵の森文庫)

左右学への招待 (知恵の森文庫)

 

 「それでは、あなたが逃亡者だと仮定してたずねます。追っ手から逃げている道の先が、左と右に分かれているとき、とっさにどちらを選びますか?」

左側に逃げる人間が多いらしい。

というわけで、左右の本である。学際的というと大仰かもしれないが、銀河系からコリオリ力、身体の非対称、そして文化的に左右の優劣から八卦まで幅広く取り扱っている。とはいえ、トンデモ学説をぶっ立てているわけでもなく、問題提起というか、こんな見方もあるよ、という感じの慎重さを感じる一冊だった。

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たとえば、こんなのは面白い。たしかにアルファベット(筆記体)は左回りで都合がよいし、ひらがなというと、縦書きにおいて右回りで調子がいい。あと、半濁点「゜」は右回りで、ゼロ「0」は左回りが習慣にあったが、混乱も見られるという(おれはやはり半濁点は右回り、ゼロは左回りで書くが)。

と、ここで右回り、左回りとはなんぞや、という話が出てくる。ねじ回しを想定してほしい。おれが右回しでネジを締めているとき、対面からおれを見ると、おれは左回りでネジを締めているのだ。これを即身的な見方と対面的な見方という。

おれは昔、これで揉めている現場に立ち会ったことがある。植物の事典の記述におけるヤマフジノダフジ(フジ)のつるの巻き方についてだ。それぞれ右回りなのか、左回りなのか。上から見るのか、どうなのか。本書によれば、物理学や工学などに合わせた即身的な見方が主流となっており、「アサガオのツルは右巻き」というのがスタンダードらしい。ちなみにWikipediaではヤマフジノダフジの項目、「上から見て」ということで、やや古いのかもしれない。

文化面でいうと、日本では日常(ケ)のときは右回りの振舞いが多く、非日常(ハレ)のときは左回りをするケースが多いという。いろいろの儀式や祭りなど、どっち回りか気になってくるところではある。

というわけで、あれやこれやと面白い視点を投げかけてくれる一冊、というあたりだろうし、著者もそういう心持ちで書いたのだろうかと思う。そしておれは競馬の右回りや左回りについて思い浮かべ、「ラグビーボール産駒は左回りが得意だった」などとどうでもいいことを記すのである。おしまい。