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G1、1番人気、4角最後方、津村明秀

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ちょっと迷ったが、フェブラリーステークスはカフジテイクから買った。コパノリッキーとて全盛期の行き足はないだろうし、団子になるのではないか。その団子を一刺しするのがカフジテイクの末脚ではないか、そう思った。いや、そんなことでもない。

 

そういう日和だったんだ。正直、おれはそこまで津村明秀に思い入れというものはない。津村が勝った重賞を挙げてみろといわれても答えは出てこない。でも、デビュー14年目だという。14年も津村は騎手をしている。そのことに少し戸惑いを覚えた。津村も14年乗っているのか。まだまだ若いと思っていたのに、そうでもなかった。まあ、そんなことを言えば、南関でアンちゃんだった青、胴赤星散らしの騎手が中央でリーディングの常連だもの。おれも年を取った。

まあいい、今日は津村がG1を勝つ。そんな日があってもいいじゃないか。おれはそう思った。馬主も50年やってまだG1未勝利(……そんな年季の入った馬主とは思わなかった。加藤=カフジの冠名もあまり使っていないようだ。ミスターモナルコスは少し記憶にある)、フェブラリーステークスくらい、といってはなんだが、勝ってもいいじゃないか。そう思った。

で、結果といえばこうだった。

ゴールド馬券勝っておけよ、ゴールドヘッドくん。思ったより流れた。流れた上で、あの名馬、そうおれが生で見たそれほど多くない馬の中で、最高にオーラがあったゴールドアリュールの子が勝った。カフジテイクは4角最後方から大外ぶん回して3着まで来た。あのパッサッパサのダートでぶっ込んできた。すげえ、けど、勝てねえ。複勝圏じゃなく、せめて連対を……というおれの願いは叶わなかった。こつこつやってきた今年序盤の馬券成績も吹っ飛んだ。だって、おれは今日、津村が勝ちそうな日和だって思っったんだから。

それにしても、だ。おれは4角最後方の津村明秀のことを思わずにはいられない。福永祐一の怪我によって回ってきた再コンビ。G1で1番人気なんてあまり巡ってこない機会。気ははやるに違いない。それでもカフジテイクは最後方にいた。そうすることしかできない馬だったのかもしれない。あるいは、鞍上がムーアなら、デムーロなら、ルメールなら、ラフィット・ピンカイ・ジュニアなら、あと一列前にいたかもしれない。だが、そんなことは関係ない。そのとき、津村はすべての馬を前にして、馬上にあった。もしもこのレースを獲ったなら、今後の人生が変わるかもしれない。自分でそういった。そういいながら、最後方にいた。全ての馬をぶち抜かなきゃ人生が変わらない。そのときの津村。おれはそれを思わずにはいられない。わりと流れてしまったペース、パッサパサのダート。でも、そこからぶっこ抜いていった、一頭、二頭……でも届かなかった一等賞。

ああ、かなわんよなあ、津村。たぶん、そういう馬なんだぜ、カフジテイク。お前は悪くないんだ。悪くはないが、すごく良くもなかった。なにが良くなかったって、勝てなかったってことさ。勝負は残酷なもの。ベストを尽くしたかもしれないが、勝てなかった、勝てなかったな津村。そして、おれも馬券で痛い目にあったんだ。いや、おれのちんけな小銭馬券なんてどうでもいいんだ。でも、津村、巡ってきたチャンスを逃しちまった。また、津村にチャンスは巡ってくるだろうか? おれにはわからない。でも、世の中、デムーロのようなやつが勝つんだ。そこには、技倆の差なんてもんじゃない何かがある。競馬ファンはそんな何かをけっこう信じている。でもな、サニーブライアンの大西の例もあるさ。そのうち大輪咲かせてみろよ、なあ津村、津村よ、G1、1番人気、4角最後方にいた男よ。