「サンサーラ」が響きわたれば『ザ・ノンフィクション』世界は加速していく

おれはあまりテレビのバラエティ番組を見ない。そんな暇があったら録画していたアニメを観るからだ。とはいえ、年末年始はべつだ。一年ぶりに吸うタバコが脳に染み渡るように、久しぶりに見るバラエティ番組は異様に面白い。そんな持論がある。

さて、そんな調子でいくつか特別番組を見たが、そのうち3つ、というかこれで過半数になるのだが、そこに共通したネタがあった。フジテレビ『ザ・ノンフィクション』を元にしたネタである。

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ザ・ノンフィクション - Wikipedia

どこまで全国区の番組か知らぬが、日曜の競馬中継の前に放送している番組である。内容は往々にして暗い。派手に成功している人間などあまり出てこない。むしろ、成功から没落した人間がアルコール依存症になって家族に捨てられ家賃も払えず、公園でストロングゼロを飲む、というような内容のほうが多い。おれはこの番組を欠かさず録画して、競馬中継が終わったあと見ることが多い。そのときradikoの音を絞って最終レースの実況になったら一時停止して聴くのも毎度のことである(あれ、おれも『ザ・ノンフィクション』人間?)。

さて、おれが本年末に『ザ・ノンフィクション』ネタを最初に見たのは『とんねるずのみなさんのおかげでした』の「第23回 細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」であった。女芸人と地下芸人のコンビが、事務的に家賃滞納による退去をめぐる掛け合い、「なあ、お前高校中退してわしとバーをやらんか」というおっさん、あとなんかひとつをネタにしていた。流れる曲は無論『ザ・ノンフィクション』のテーマ曲「サンサーラ」である。その場にいた芸人たちにもウケていたところを見ると、芸能人にもいくらか『ザ・ノンフィクション』を視聴していることを伺わせた。ちなみに、おれはアマレス兄弟が面白かった。

二つ目は、初の漫画原作バラエティを謳った『人生逆転バトル カイジ』である。

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これの出場者に「ノンフィクション系地下2階アイドル」の大浦忠明(きらら)の名があった。おれはこの番組の存在をネットで知り、出場者情報を見たときにピンときた。金がないため家畜用の米を食ってる人ではないか、と。まさにそうであった。大浦は1回戦で破れてしまうが、紹介のときにはきっちり「サンサーラ」が流れていた。

しかし、この番組、賞金額が200万円プラスαといったところなのだ。どうもあまり高額賞金を出すと法に触れるとかいう話も見たが、なんとも実にリアルな額という気もしてならない。200万円を元手になにかを初めて人生逆転はあるかもしれないが、200万円だけで人生逆転ということはないだろう。とはいえ、200万円は小さくない額だ。これを読んでいる人のうちのどれだけがそう思うかわからないが(なにせこのブログサービスの読者は高収入者が多い)、少なくともおれにとっては小さくない。すごくすごい大金というわけではないにしろ、ある程度のまとまったお金、ではある。そして、今の日本にはそのくらいの借金を背負っている人間、最初の一歩にたどり着けない人間が少なくないのではないかと思わせる。なんともリアルな金額のように思えてならない。鉄骨渡りなどはセットにかなり金がかかっていそうだが、賞金200万円。TBSはレギュラー化を考えてもいいのではないか。人材は……『ザ・ノンフィクション』でもチェックしておけばいくらでもいるだろう。

三つ目は『朝まであらびき団SP あら1グランプリ2017』である。『あらびき団』について説明が必要かどうかよくわからない。

朝まであらびき団スペシャル あら-1グランプリ2017|TBSテレビ

とにかく、おれが野性爆弾のクッキーやハリウッドザコシショウ、おそらくはとろサーモンを初めて知ったのはこの番組だったような気がする。して、今回『ザ・ノンフィクション』ネタをぶっ込んできたのは椿鬼奴率いるキュートンである(説明が必要かどうかよくわからない)。なぜか(と問うてはならない世界観だが)『まどマギ』のテーマで登場も、一人欠けている。なんと、スタジオの隅でひきこもり状態。それを迎えにいくメンバーたち。だが、寝ている本人は布団を引き下がれても一升瓶を直飲みする。そこで流れる「サンサーラ」。殴り合い、それを止めに入るやつ……。どうなったかはご自分の眼で確かめられたい。

して、この「サンサーラに」即座に反応したのが東野幸治である。「ザ・ノンフィクションの曲や」と。そして、ゲストの本田翼(ウィング本田)曰く、曲によって「すごくダメな人に見える」。

……本来は前向きに生きていく曲のはずが、ダメ人間のテーマソングという位置づけになってしまったのか。まあ、それもよかろう。「サンサーラ」が流れるたびに、日本は『ザ・ノンフィクション』の世界に染まっていく。いや、順番が逆だろう。この日本が『ザ・ノンフィクション』の世界だからこそ、「サンサーラ」が流れるたびに貧しさは加速していくのだ。そんなことを考えさせられる三番組であった。

あ、そろそろ競輪のグランプリの時間や。今年は福島でええやろ。ほな、おしまい。

(エンディング曲 「サンサーラ」)

 

サンサーラ

サンサーラ