『人類はなぜ肉食をやめられないのか 250万年の愛と妄想の果てに』を読む

 

人類はなぜ肉食をやめられないのか: 250万年の愛と妄想のはてに

人類はなぜ肉食をやめられないのか: 250万年の愛と妄想のはてに

 

おれは消極的な反肉食的精神の持ち主である。肉は食う。普通に食う。好んで食う。一方で、肉食を成り立たせる畜産業というものが、地球の資源をいたずらに蝕み、破綻へと追い込んでいるような気がしてもいる。実にいい加減な態度だ。それは認める。だが、中国人など大量の人口がアメリカ人並に肉を食い始めたら、なんらかの破綻が起こる。そう思っている。日本人はどうなんだ? もうすっかり肉食の徒であろう。いずれにせよ、肉食用の家畜が食う飼料のぶんだけ、人間の取り分が少なくなり、それに手がとどかない人たちが出るのは間違いないと思うのだ。

して、人間はなぜ肉を食うのか? 考えてみよう。ゴリラやチンパンジーが肉を食うか? 例外的に小さなサルを食うことはあっても、ほとんどはベジタリアンだ。木の実や果実、樹木の皮を食って生きている。それにして筋骨隆々。なのになぜ、人間は肉を食らうのか。

最初の頃はたとえ「だだの」腐肉食動物だったとしても、二百五十万年前には人類はすでに間違えなく肉を食べていた。肉の味を覚えたきっかけは、気候変動が起こり、いつもの食糧を見つけるのが難しくなっていたからだ。簡単に言えば、そこに肉があるから肉に手を出したのだ。

そうだ、大昔に気候変動が起きなくて、木の実だの果実だのを食い続けていたなら、人類はベジタリアンのままだったのかもしれない。ところが、そうはいかなくなって肉を食うようになる。肉を食うようになって、階級などが生まれた。肉食が人類の社会を形作っていった……かもしれない。

そして例えば、時間をどんどん進めて日本という国が出来たときどうなったか。

日本マクドナルド藤田田の言葉が、日本人のあいだに広がっていた感情をうまく表している。「千年間ハンバーガーを食べ続ければ、金髪になるだろう。食を通じ世界に伍していける真の国際人を育成できれば」

これはいつごろの発言だろうか。少なくとも明治天皇が進んで肉を食して見せたよりずっとあとのことだろう。千年ハンバーガーを食べれば金髪になるのか? 鼻が高くなるのか? 知った話じゃない。しかし、人類いうもの、肉の火に焼ける香りに負け続けてきたのは事実だ。いずれ凄まじい人口を誇る中国人も肉を食うだろう。そのとき、地球は保つのだろうか。べつにおれは中国人に肉を食うなと言っているわけじゃあない。ただ、その代替があって、それを受けいれることによって、地球の食糧の循環がうまくいけばいいな、とくらいは思っている。そう思いながら、おれは肉を食う。石を投げてくれても構わない。