わしの庭でえらいドンパチやってくれたのう―深町秋生『死は望むところ』

 横浜スタジアムの脇を通過して、根岸線の高架下を潜り抜けた。根岸線より南側は伊勢佐木警察署の管轄内だ。勤務中の同僚たちに目撃される可能性は大きく減る。

 扇町に小さなバー『ファビオラ』があった。赤と黒を基調とした外見と分厚い木製のドアが特徴の店だ。

 

死は望むところ (実業之日本社文庫)

死は望むところ (実業之日本社文庫)

 

扇町に小洒落た小さなバーがあるかどうかというと疑問である。蕎麦屋や中華料理屋、カレー屋があっても、そんなバーは無い、と言いたくなってしまう。むろん、大喜びで言いたくなってしまうのだ。毎日その、根岸線の高架下を、右手に横浜スタジアム、左手に横浜家庭裁判所を見て出勤している身としては。本牧ふ頭! 山手署!……こないだ免許証をもらいにいったばかりだ。

そして、神奈川県警加賀町署。中華街の中にある警察署。もう両者とも退職してしまったから言うが、おれのおじと従兄弟は神奈川県警に勤める警察官だった。加賀町署は県警内でも有望なエリートが集まる警察署と聞いていた。然り、然り。扇町には伊勢佐木警察署のお巡りが巡回に来る。然り、然り。

というわけで、むやみな地元愛でテンションが上がったが、無論、深町秋生、そんなことと関係なく読書のテンションを上げてくる。おなじみと言ってはなんだが、警察とことを構えるのも臆さないヤクザの武装集団、タフな女性警官、これぞ深町ワールド。そして44マグナムにデザートイーグルワルサーPPK(おれの一番好きな拳銃)、武器に込められた魂。

そして、愛。

極限の暴力と策謀の中にある愛、これがいいのだ。キャラの立った殺人者たち、それが織りなす極限状態、そこに愛がある。ぐっと引き込んで離さないところがある。一気に読ませるところがある。なんだか本牧ふ頭に自転車に乗って行きたくなってきたぜ。まったくハズレがないな。バズーカみたいな鉄砲で脳漿撒き散らされたようだ。上座部仏教本読んでる場合じゃなかったぜ。このノワールに身を委ねろ。以上!