第5回大井競馬 馬主服使用の地方所属馬について | News | 東京シティ競馬 : TOKYO CITY KEIBA
いや、べつに変な勝負服ではない。馬主の勝負服だ。だが、的場文男の「赤、胴星散らし」でない勝負服姿というのは、なにか変だった。
……と、同時にテレビの前のおれは閃いたのだ。「的場文男が東京ダービーを勝てなかったのではない。いつもの勝負服のデザインが宇宙的な運命によって東京ダービーを勝てないめぐり合わせにあったのだ！」と。
といって、会社の昼休みに買った馬券を、さらに買い足したりはしなかったのだけれど。
そう、的場文男五度目の東京ダービー二着馬ゴールドヘッドをidに借りているおれにとって、もはや東京ダービーは的場文男の応援馬券を買うレースになっている。単勝人気の割に連複系はシビアなオッズがつく。しかし、なんだかんだで上位に持ってくることが多いので、そちらを買っておくのは悪くない。
今回も、そうした。もちろん単勝は買うけれど、本線はワイド流し。そして三連複ボックス。
そして、ゲートが開いた。十二番枠に入ったクリスタルシルバー的場文男、つんのめり気味ながら好スタート。やや強引に内に切り込んでいく。執念のポジション取りといっていい。最内に入れて執念の三番手追走。四角、パカっと前が空く。逃げ馬を交わして先頭に躍り出る。やはり、ついに、このときが来たのか！ そう思う。が、同じく外目を先行していた矢野貴之ハセノパイロが並びかける。執念の叩き合い……、勝ったのは外ハセノパイロ。的場文男、実に十度目の東京ダービー二着。……同じレースを十度二着になるほうが、一着を一回取るより難しいのではないか？ あと、勝負服は関係なかった。というか、黄金の頭が一着になれなかったのだから、銀色じゃあ一着になれない。もっとゴージャスで、レジェンドでプライドのある馬名じゃあなきゃな。
まあ、ワイドは最低でも一点取れただろ、と手元の携帯端末をいじり、血の気が引いた。ワイド流しの軸が八番になっているのだ。そして、相手に十二番がいない。何度もレース番号を確認する。おそらくは、相手最後の一頭入力時に、うっかり「軸」のボタンを押してしまったのだ。操作ミスによる買い間違い……！ 痛恨の外れ。
と、茫然自失になっていたが、しばらくすると的中の○印。なんと三着に八番のクロスケが入ってくれたのだ。おれが最後に「おさえておくか」と思ったのがクロスケだった。高配当になったクリスタルシルバーとのワイドは逃したわけだが、ハセノパイロとの組み合わせ一点だけでもそこそこついてくれた。なお、三連複ボックスにクロスケは入っておらず、四着のモジアナフレイバーが来ていれば的中だったが、まあいい。これでよしとする。
勝ったのはハセノパイロ。騎手は矢野貴之。実のところ、おれは及川サトルが実況しなくなってから数年、南関競馬に興味を失っていた。「たかが実況アナウンサーで？」と思う人がいるかもしれないが、大レースの日、後半戦に入って及川が実況を始めたときの高揚感。本当に大切なものだった。
閑話休題。そんなわけで、なんとなく南関に戻ってきてみたら、自分の知っていた騎手も引退したり、中央へ移籍したりで、わけがわからなくなっていた。個々の馬を追うだけの時間もないし、誰を軸にしていいかわからない。そんなとき、当時の2chでこんな書き込みを見た。曰く「大井は矢野から買っておけばなんとなく勝てる」と。
それ以来、おれは矢野貴之の来歴も人となりも、なにより腕っぷしも知らずに「とりあえず矢野」で馬券を買い、これがなんとわりと当たるのである。矢野の騎乗っぷりは、なんというか剛腕で押し切るとか、そういう地方らしいものでもなく、なんとなく来る、のだ。おれは矢野貴之と相性がいい。そういう思い込みは持っている。
しかし、矢野、ここで的場文男を蹴散らしてしまうのか。そうも言いたくなる。が、まだまだ的場文男には宿題を背負ってもらって、もっともっと大井の帝王として乗り続ける、そんな結末であったようにも思う。
的場文男、東京ダービー二着十回。キリがいい。これに一着一回が加わればなおすばらしい。来年もおれは東京ダービーで的場文男から馬券を買うだろう。ただし、単は薄く、複メーンで。そして、しれっと矢野を相手にマークするのを忘れない。
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