「ワールドウィッチーズ みんながいたからデキたこと! ~10thアニバーサーリー~」へ行くのこと

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「これが最後かもしれないしな」。

何週間だったか、何ヶ月まえのおれはそう思って、すばらしいストライクウィッチーズのイベントに申し込んだ。申し込んだら当たった。当たったのでチケットを発見した。そして7月8日が来た。

申し込んだのは夜の部だった。会場は豊洲ピット。開場は17:45。知らない場所。どうも、豊洲新豊洲という駅に行けばいいらしい。豊洲からは徒歩20分とあった。新豊洲からは徒歩3分とあった。新豊洲には新橋からゆりかもめというのに乗って30分くらいかかるようだった。だが、おれは東京の交通事情には詳しくないし、暑いなか20分歩くのも嫌なので、後者を選んだ。

問題は時間である。開場時間に合わせて行くならば、かなりの余裕がある。とはいえ、物販がある。そこが問題だ。やはりなにか買いたいじゃないか。買って支えるすばらしいストライクウィッチーズ、である。であるので、早めに行こうと思った。そのためには早めに起きようと思った。実のところ「早め」になんの根拠もなかった。でも、「早め」に行けばなんとかなるだろうと思った。おれは10:00に目覚ましをかけた。早めに寝た。

が、おれは10:00に起きられなかった。鉛様麻痺、とまではいかぬも、土日は14:00に起きるような習慣がついているのか、身体が動かない。11:00にアラームをセットし直して、寝た。それでも「早め」だろう、と。

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甘かったのだなあ。ゆりかもめはよかった。車窓で金が取れるんじゃないかと、田舎者のおれには思えた。豊洲ピットは目の前だった。ちょうど、昼の部の入場が始まっているところだった。さて、お目当ての物販はというと……見当たらない。二人連れのお客さんが「物販は中かな?」などと話しているのを聞いて、そういうことなのだろうかとも思う。思うが、確信が持てないので、スタッフさんに聞いてみると、建物の外の左の奥だという。行ってみると、ガランとしてる。それもそのはず、立て看板のグッズ一覧、ほとんどが売り切れである。なんということだろうか。それでも、5,000円のTシャツがにシールがないので、ガランとした売り場に行き、「Tシャツなにか残ってますか?」と聞く。「すみません、こちら一種類となります」と売り子さん。「じゃあ、それ」とおれ。「3,500円になります」。「え?」。まあいい、安く済んだ。おれの見間違いか、シールの貼り間違いか、だれかのいたずらだろう。

しかし、一人三点という縛りはいいにせよ、夜の部は夜の部でとっておいてくれてもいいじゃないかと思う。いずれにせよ、おれはアニメのイベントといえばストライクウィッチーズしか行ったことがないし、ともかく甘かった、のだ。

というわけで時間が余ってしまった。「早め」に行く→物販の長い行列→開場の行列、などと考えていたのだが、物販、すぐに終わる。前の部がはじまったばかり。ガランとした周辺。とりあえず、あたりを一周してみる。途中で熱中症かなにかで倒れている人を二人見かけたが。同行者が介抱していた。おれは寂しい一人のおっさん、倒れても見捨てられるだけだろう。上の写真はなんか「teamLab Planets TOKYO DMM.com」前。バス停ができるのだろう。なんかCMでやっていたやつか? これで時間潰すか?

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いいや、潰さない。歩くのがおれの信条。というか、ぐるり回ってきたら、昼の部がはじまっていて、中の音がけっこう聞こえてくる。ここで怖いのがネタバレである。ネタ、といってはなんだけれども、やはり新鮮な気持ちで夜の部を迎えたいじゃないか。

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そして、橋あったので、とりあえず渡る。おれは橋があると渡りたくなるタイプの人間である。

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橋をわたる先に、整備された緑地帯が見える。写真ではわかりにくいがその奥にべつの橋が見える。その橋を渡って向こう岸を歩いて、豊洲PITに戻る。四角く歩く。ベンチが見えるので、あそこで時間を潰そう。

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向こうに豊洲PITが見える。高級タワーマンション住民のために整備された場所。おれのように、さまよえるストライクウィッチーズ難民は一人もいない。

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エースコンバットストーンヘンジみてえだな、と思う。日差しはきつくない。風が吹いている。おれは人気のない整備された海沿いのなにか、ベンチに腰掛ける。radikoで競馬中継を聴く。東スポの競馬欄を持ってこなかった。持ってこなかったが、ラジオ中継の解説を頼りに追加で馬券を買うなどする。メーンレースは三場とも昨夜の内に買ってある。

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のどかなものよのう。競馬中継だけでは間が持たず、青空文庫梅崎春生の『狂い凧』など読み始める。すばらしいストライクウィッチーズのイベントの待ち時間、競馬中継を聴きながら、梅崎春生の『狂い凧』を読んでいるのは、この瞬間世界でおれ一人だろうと思う。一人は悪くない。

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さて、馬券の方は函館メーン、福島と中京の最終を当ててプラスとはいかぬも踏みとどまった。マテラスカイのレコードには驚いた。ついでに、先に書いた奥の橋に行こうとしたら、道がつながっていないのにも驚いた。来た橋を戻る。それも人生。そこで、橋の向こうが江東区であることを知る。おれがいままでいたのが何区なのか知らない。そしておれは疲れていたし、すこし頭と腹がいたくなってもいた。適当で中途半端な「早め」は裏目に出た。

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太陽も傾いて……と、この写真ではそうだが、まだそんな感じではなかった。ポツポツ人が集まり始めている。そろそろ前の公演が終わりそうだ。おれはRed Hot Chili Peppersの『Blood Sugar Sex Magik』の音量を上げる。おれはこのアルバムでレッチリのボーカルが我が敬愛のチャールズ・ブコウスキーのファンであることを知った。好きなものはつながっているのだ。

会場の扉が開く。中からポツポツと、そしてドドドと人が出てくる。彼らの言葉を聴いてはならない。……なんとなく、夜の部の方が「ラスト目一杯」という気がしたのだが、なにか発表があるかもしれない場合、最初の回の方がいいのかもしれない、などと思う。

入場は、「立ち見」の整理番号順から。それは昼の部の入場時に見た。そして、「プレミアムシート」(高いけどなにかいいものがもらえる)は別の入口に列を作る。おれはそのどちらでもない、「普通シート」だ。どこにいていいのかわからないので、「列の場所がわからない人はいませんか!」と呼びかけているスタッフさんに聞く。「普通シートは最後のご案内になるので、左手奥でお待ち下さい」とのことだった。おれは待った。チケットとドリンク代の500円玉を握りしめて待った。いや、握りしめてないけど。

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そして、入場とあいなった。ドリンクのコインはすぐに「ぶどうジュース」ならぬ「麦のジュース」に替えた。そして、一気に飲み干した。その一杯のために、おれはすこし水分の摂取を控えていた。とはいえ、血中アルコール濃度を速く高めることを主眼においた飲酒生活を送っている身、ビール一杯で酔ったりはしない。とりあえず、座席に向かう。このあたり、急がなくていいのが「シート」のいいところだ。

して、おれのシートは6列目のキリのいい番号。行ってみると、なんと端っこの席である。いったん着席する。光るオタクの棒などをバッグから取り出したりする。が、まだ時間があるのでお手洗いに行く。荷物をどうしようかと思うが、べつに端っこなのだし、また背負うことにした。

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管野直枝のマフラーいいよな。マフラーだけ売らないのかな。売ってたりするのかな。マフラーだけじゃなくて衣装もいいよな。でも女物だよな。おれがこれを着たら女装ということになるのかしらん。

用を済ませ、反対側の入り口から会場へ。そこで、立ち見席の様子を見たのだが、すごい密度であった。満員電車くらいというか、なんというか。日和って普通シートにしてよかったと思う。席に戻ると、だいたい列の中が埋まっている。隣は女性の二人連れだった。今度こそ、座る。端っこはいい。両端にだれもいないというのがいい。とはいえ、ステージからは若干距離がある。でもいいか。以前のイベントでものすごいアグレッシヴな若者の近くで辟易したことがあったし、おっさんにはこのくらいのシチュエーションがいい。

と、あまり間もなく、照明が落ちて、ラル隊長の声による注意事項。そして、石田燿子さんが登場。シート席総立ち。正直、シート席でも立つのか、それとも座るのか、よくわかっていなかったのだが、皆迷わず立った。おれもそうした。そして、光る棒を降った。オイオイオイ!

が、曲が終わるとみな座った。おれも座った。キャストが出てくる。501はいつもいない人(というと語弊があるか)に加えて、小清水亜美さんがいなかった。小清水さんは舞台映えするな、と思っているので少し残念ではある。ほか、キャストではいきなりの出産、結婚報告のあったばかり大橋歩夕さん、くるりと回って登場。おおいに湧く。いつ出産したのか知らないが、見た目でそうとはわからない。一方で、見た目でそうとわかったのは瀬戸さおりさんで、お腹にお子さんがいるのである。この舞台が胎教にいいのかどうかはわからない。いや、きっといいだろう。

10年、なのだ。あ、おれは1期をリアルタイムで見ていないから、正式には10年見続けてきたとはいえない。とはいえ、すばらしいストライクウィッチーズとは長い付き合いになったといえる。あ、「すばらしいストライクウィッチーズ」とはおれの中でのこのシリーズの略称(略していない)なので、決して他部隊を否定するものではないので。それで、なんだろうね、501のメンバーも次々結婚したり出産したりで、人の人生いうもの、歩んでいくものやの、と思うたりした。おれはといえば、底辺をたゆたってなにも積み重ねず、代わり映えもせず、これでいいのかね、などと思ったり、思わなかったり。

いずれにせよ、三十路を過ぎてアニメを見始めたおれにとって、最初期にあたる作品の一つがすばらしいストライクウィッチーズだった。声優さんのラジオなども聴き始めた。そういうところから言うと、名塚佳織さんのラジオはずっと聴いていたが、今回、はじめて生で村川梨衣さんと照井春佳さんを見ることができたのはうれしかった。想像通りというとなんだが、りえしょんは弾けていたし、ぱるにゃすは独自の世界があるように思えた。佐藤利奈さんも初めて生で見ることができたが、さすがの貫禄と存在感であった。そして、なんか福圓美里さんが楽しそうにしているのはいいことだと思った。公式におっぱいということになって、ますますの活躍を期待したいのであった。

で、おれはてっきりもうちょっと歌うものだと思っていたが、そうでもなく、企画と告知がメーンであった。ブレイブウィッチーズのキャラソンの予習が足りないな、などと思っていたのだが、その心配は幸いにも(?)なかった。

楽しいひとときを過ごした。

ファンでない人には「宣伝と佐藤有世の怪しい踊り(映像)に金を払ったのか?」と言われるかもしれない。でも、それでもいいのだ。10周年でひょっとしたら終わってしまうのかも? などと思っていたおれの邪推を吹き飛ばす、怒涛の告知。スオムスいらん子中隊のリブート(となりの女性がものすごく感動していた)、2019年、「発進します!」のアニメ化、そして2020年、高村和宏監督による501の続編……それまでは死ねないし、テレビを見られる環境でいなくては(いや、テレビ放送とは言ってなかったっけ?)、などと思う。さらに「音楽隊ウィッチーズ(仮称)」などの展開もあって、また10年戦えるのか、などとも思う。戦ってほしいとも思う。だが、とりあえずは2020だ。トーキョーではない、ベルリンだ。

詳細は公式サイトをあたられたい。

w-witch.jp


「第501統合戦闘航空団 ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN」PV第1弾

ああしかし、なんだ、これ、いいよな。このクオリティでさあ。楽しみだよ。

というわけで、集大成ではなく、今後への展開を見せつけられて、それでも長くファンでいたことに少し涙もろくなって、おれは家路についた。これまでのファンも、これからのファンもいっぱい楽しめればいいと思う(昼の部、夜の部、両方参加のファンが多数派だったように見えたのは、いいことなのかどうか)。

いちばん端っこのおれは急いで光る棒をバッグに入れて、退場した。いろんなファンがいた。ガチガチの兵装をしているファンもいれば、今日発売のシャツを着ているファンもいた。過去のTシャツを着て、タオルを持っているファンもいれば(おれもメルカリで手に入れた雑誌付録のTシャツを着ていた。上からミリタリーの半袖を羽織っていた)、普通の格好のファンもいた。なんでもいいじゃないか。生きようか、2020年まで。あるいは2021年、あるいはその先まで。

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帰りもおれはゆりかもめに乗った。豊洲に出たほうが早いのかもしれないが、安定をとった。夜景を見られるかと思ったが、席が空いていたので座ってしまい、よく見られなかった。新橋からは京浜東北線。が、発車時刻を過ぎても来ない。思えば、行きの京浜東北線もそうだった。そういう日もある。少し混んだ車内。立っていたら、運良く前の人が降りたので、座らせてもらった。眠くなるかと思ったら、眠くならなかった。どこか興奮している。

山手についた。セブン-イレブンでサンドウィッチとサラダ、そして500mlのビールを買った。なにか抽選のくじを引いたらあたりが出て、炭酸水をもらった。暗い夜道、狭い道。街灯の下、おれの目の前をなにか細いシルエットの哺乳類が横切った。狐につままれたように思った。しかしそいつは狐じゃない。じゃあなんだ、あれだ、あれだろう。名前を思い出せぬままアパートに着いた。着ていたものを洗濯機に放り込み、シャワーを浴びた。今年始めてエアコンのクーラーをつけた。ビールを飲んで、サラダを食って、サンドウィッチを食った。そうして、写真をアップして、こうしてブログを書いている。眠気はない。明日起きられるだろうか。明日なんてどうでもいいじゃないか。

 

そう、あれはハクビシンといったっけ。