さよならジプレキサ

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ここのところ倦怠感がひどい。ひどい倦怠感に襲われることが多い。身体に力が入らない、椅子に座ってるのが精一杯で、なにもできない。なにも食べたくないし、飲みたくもないし、読みたくもないし、見たくもない。なにもしたくないという意志すら抜け落ちてしまい、ひたすらに重力が強い。その力が自分を下へ下へと引っ張るのをただ感じるばかりになる。

こういう時間、健康な人間は勉強をしたり、おいしいものを食べたり、友と語らったり、恋愛にいそしんだりするのであろう。おれにはなに一つ不可能だ。得るものはさらに得て、奪われるものはさらに奪われる。まさにしかり。

「……というわけでなにかアガる薬ないですかね?」

「初診の問診票から感じていたけど、あなたはトントーンと自殺しちゃうようなタイプだから駄目です」

「じゃあなにか薬を変えるとか?」

というわけで、ジプレキサセロクエルに変わった。似たような非定形抗精神病薬だ。糖尿病禁忌なのも一緒だ。ただ、セロクエルの方が「マイルド」らしい。おれはこのところ寝付きも悪いのだが、セロクエルの方が寝付きにもいいらしい。

とはいえ、もとはといえば幻覚を見る人を幻覚を見ない人にするような薬だ。ジプレキサと一緒だ。アガる薬ではない。少し、就眠が改善されるかもしれない。すると、朝の調子もよくなるかもしれない。そうして、わずかながらに生活が改善されるかもしれない。

……だからといってなんだろうか。向精神薬のモヤと、圧倒的な倦怠感の行ったり来たりのあいだに、おれがなにをできるというのだろうか。苦しいだけじゃないか。この地獄をつくったのは誰だ? 思い切り侮蔑の意を呈しながらこの世を去ってやろう。おれに残された力と自由を最大限利用して。