薬が脳に馴染んでくる

おれがはじめてジプレキサを飲んだとき、頭がクラクラしてひどい状態だった。そのときのことを医者に言うと、「脳の組成が変わるからね」と言われた。「脳の組成が変わる!」と驚いた。そのことを女に言うと「君は薬を飲む前の君ではなくなったのね、怖い!」と茶化された。おれはおれで「薬で脳の組成が変わるなんて、なんてすばらしいことだろう!」と思っていた。

goldhead.hatenablog.com

そのジプレキサが、セロクエルに変わった。ちょうど双極性障害……躁鬱病の鬱の波が来たのか、薬の変更によるせいかわからないが、とてつもない抑鬱がおれを襲った。昨日、そうだった。今日の午前中、そうだった。だが、明日の朝はどうなるかわからない。セロクエルがおれに、おれがセロクエルに馴染んで、平常運転となるかもしれない。あるいは、やはり今日の午前中のように、身体が固まって動けなくなるかもしれない。それは、わからない。だが、正しい表現なのかどうかもよくわからないが、抗精神病薬を変えれば「脳の組成」が変わるのだろう。おれはそう信じようと思う。よい方向へ向かう、なんて甘いことは考えていない。だが、飲み薬だけで脳が、おれの心が変化して、まったく違う人間になれるなんて、なんておもしろいことだろう。遺伝も、育成も関係なく、脳が変わる。これはおもしろいこと以外のなにものでもない。

正直、おれ程度の脳の欠陥の持ち主が、ジプレキサだのセロクエルだの言ったところで、もっと重い症状を持った人間から見ればお笑い沙汰だろう。だが、おれはおれで、やはりおれの脳が変わるなら、それはそれでおもしろいと思っている。それだけのことである。

人格改造マニュアル