何映画? でもおもしれえ 『ゲット・アウト』

 

おれはあまり人の顔の区別がつかない。実生活で一回会っただけの人の顔は覚えられないし、ましてや映像作品中の、とくにおれと異人種の顔を見分けるのはかなり難しい。

そんなおれにとって、この映画の冒頭と、それに連なるシーンというのは、やや意味不明だった。「時系列を戻しているのかな?」とか思った。いや、伏線だよ、それ。

というわけで、サスペンス、ホラー、人種差別問題、コメディ、サイコ……何映画かわからんが、『ゲット・アウト』である。

筋書きとしてはこうだ。黒人男性が白人女性の恋人の実家に初めて行く。行った先で……これ以上は言えねえや。

というわけで、おれが詳細をあげつらってどうこう言わないし、言いたくないというのは、おれが面白いと思い、なおかつこの面白さをおれの書く感想文で損ねてはいけないという意思の表れなのである。つまりは、面白いから見てみろよ、という話だ。それでおしまいだ。

と、いうところなのだけれど、Blue-rayの特典映像だかに含まれているカットされたシーンの監督解説、これも面白かった。ラストシーンにしても、何パターンも撮っている。ジャッキー・チェン作品のNG集とはちと違う(NG集も面白いけどな)。どれも、本採用されてもよかったようなバージョンだ。「映画というのは、こんなにいろいろのバージョンを撮っておくものなのか」と驚いた。そして、それらに対して、「このバージョンはこれこれこういうところがいいが、これこれこういう理由でボツにした」と、理路整然に語る監督、それがおもしろい。

正直、おれはラストシーンについて、ボツになった第一候補のような展開になるのではないかと思っていた。が、それはボツになった。とはいえ、おれにとっては、そのボツの方が予想された結末であって、そちらの方が「本当の」結末に思えてしまう。もちろん、本編のあとに見たから印象に残るというのもある(ボツのラストシーンを見てから本編を見始める人もいないだろうが)。

しかしまあ、いろいろのボツシーンについて「作品全体にそぐわなかった」、「品位を保てなかった」という理由をあげる監督のコメント、それについていちいち頷けるわけである。逆算すれば本編は納得の出来、ということになる。『ゲット・アウト』は面白かった。そう言っておく。そして、できればカットされたシーンの監督コメントと、チャンス・ザ・ラッパーが司会の舞台挨拶映像も見てほしいな、などと思うのである。以上。