きちんと書き残しておくべきこと

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おれが山の中の喫茶店だったかレストランだかの屋根の写真を撮っていると、声をかけられた。

「こういう苔とかを撮るのが人気ブログの秘訣ですね?」

おれは急にこっ恥ずかしくなって、しどろもどろに「いや、そんなことは、べつに、人気なんて、ないです」などと答えたと思う。

たぶん、脚力、体力は彼が一番だったし、それゆえに一番最後を走っていた。が、その彼がほかの三台から遠く遅れてしまった。自転車を止めて待った。追いついてきた彼いわく、「口の中にカナブンが飛び込んできた」。みんなで笑った。

おれのロードバイクが重装備だという話になった。

クロスバイクを買ったばかりの、初心者のころ読んだ本に、前照灯2灯、後方赤色灯2灯と書いてあったので」

とおれ。

「それ、絶対エンデューロの本だわ!」

と言われた。そうだったのか。おれは笑った。

おれが、以前乗っていたクロスバイク、GIANT ESCAPE 2で江戸川サイクリングロードを北上し、一日に195km走ったことを話したら、「そいつはすごい!」と言ってくれた。それ以来、おれは自分がクロスバイクで一日195km走ったことがあると思い出すたびに、そのときの褒め言葉を思い出すようになった。おれはうれしかった。

おれが自分自身の身体能力や企画行動能力を鑑みるとき、その古い記憶にすがるところは少なくない。そのたびに、声に出して感嘆してくれた、あの光景が思い出される。これに嘘も誇張もない。

おれは、以上のようなことを日記に書かなかった。おれはネットのgoldheadさんとして誰かとサイクリングに出かけることなどただの一度もなかった。だから、その一度というものを素直に記録することができなかった。結果として、今でも後悔が残るエントリーを書いてしまった。ひどく出来が悪い。今からでも書き直したい。しかし、書き直すことはできない。ただ、「コーヒーが薄かった」というのは、あらためて読んでみて思い出した。

たしかに、コーヒーは薄かった。そんなことも、なにごとも、一期一会だ。そんな言葉をみなが心に留め置きながらも、そんなことを意識して生きている人は……いないとは言わないけれど、ほとんどいないんじゃないだろうか。だけれども、きちんと書き残すべきに値することは、きちんと書き残しておくべきではないかと、そんなふうに思った。うつつのことはうつつのこととして。

ただ、なにを書き残しておくべきことかを判断するのはむずかしい。しかし、勝手に覚えていることは、覚えているに値することだろう。書かなかったことの方を覚えている。おれがろくな記事を書けなかったのも、そのせいで後悔の記憶に残るひとつの功績だったのかもしれない。そもそもおれが空想にふらふらと逸れないでものを書けるのかあやしいものだが。

一期一会。たった一度会っただけの人間だからこそ、そんなふうに思う。いや、そんなふうに思う、考える以前に、なんとも言えぬ後悔が刺さってきて止まらない。たとえば、もっとネットの上でやりとりを試みてもよかったのではないか、とか。とても聡明で、快活、心身ともに充実、そのわりには、はてな村なんていう辺鄙なところに居る面白そうな人。せめて、あと、一言、二言でも言葉を交わしておけばと。

しかし、この記事も余計な言葉が多すぎる。

簡単に言うと、おれはわりと、悲しんでいる。

おれの薄い本が出るらしいです。 - 関内関外日記

良いぞ良いぞ!

2018/12/06 09:36

 

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……あと、直後にバイクラックを延焼させてしまったのは申し訳なかった。

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