君はナンシー・ケリガン襲撃事件を覚えているか? 映画『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』を見る

 

君は「ナンシー・ケリガン襲撃事件」を覚えているだろうか。おれはうっすらと覚えている。もちろん、トーニャ・ハーディングという名前とともに。

「I, TONYA」である。amなのか、それともべつの英語が入るのか、その余地を残したタイトルなのか、おれにはわからん。わからんが、これはトーニャ・ハーディングの映画である。

とても、強烈である。とくに、トーニャ・ハーディングの母親が強い。その強さの前には、トーニャ・ハーディング本人が霞むほどである。それだけでも一見の価値がある。

と、同時に、トーニャ・ハーディングについて「フェイク」という印象(といっても、おれにはそういう印象すらなかったのだけれど)を晴らす、アメリカの女子選手で最初にトリプルアクセルを成功させたという実績なども知ることができる。とはいえ、おれはあまりフィギュアスケートについて詳しくない、というか興味がない。

興味がない、とはいえ、この『アイ,トーニャ』は楽しめた。いかにもアメリカ、ああ、アメリカ的な人生、アメリカ的な事件よ。もしも君が「ナンシー・ケリガン襲撃事件」よりあとに生まれたのだとしても、この映画は見る価値がある。おれにはそのように思える。トーニャの、アメリカ的な不幸、栄光、強さ、弱さ、これを見るのだ。そこには、なにかこう、なにかがある。なんだかわからないのだが、なにかがあるんだよ。そして、おれはなにかがあると思える映画が好きだ。それだけのことである。