令和二日目初夏の空

おれの令和初日、すなわち令和元年五月一日は、ほんとうになにも記すことがなかった。

前の夜はテレビでカウントダウン(ばかばかしい)を見ながら、「平成の終わりだ、酒が飲めるぞ」とばかり酒を飲み、そのあと「令和のはじめだ、酒が飲めるぞ」とばかりに酒を飲み、寝てしまった。

そして起きたのは昼過ぎだった。昼過ぎに目を覚まし、また寝てしまった。二時頃起きた。起きて、インスタント麺を食いながら、地方競馬の馬券を買ったように思う。三勝一敗、とんとん。そのあとの記憶はないが、普段よりずっと早く寝たように思う。

そして、令和二日。朝、起きる。なぜだかわからぬが、十分な睡眠時間のはずなのに、目が覚めたらむちゃくちゃ眠い。さらには、背中と両足に筋肉痛。二度寝した。

昼、目覚める。筋肉痛が気になってもう眠れない。おれは100円ショップに買い物の用があり(あることにした)、また、図書館の予約受け取り可の通知が来ていたこともあり、外出することにした。昼ごろまで降っていた。しかし、シャワーを浴びて、外を見てみると、スカッと晴れていた。おれは会社まで自転車で行くことにした。

会社の駐車場に自転車を停める。すると、二人連れのおっさん(おれもおっさんなのだけれど、おれよりもおっさんということだ)から声をかけられた。一人はちょっといかつい風貌で、もう一人は出勤中のサラリーマンのようであった。

「ここらへんにクリーニング屋ありませんか?」

と、一人目。

見てみれば、片手に上着を持っている。そして、着ているシャツに茶色いシミ。そこでもう一人のおっさんを見てみれば、片手にコンビニのコーヒーカップを持っている。

緊張感。

「その道を一本行ったところにありますよ」

と、おれ。

「いや、その店が無くなっちゃってるんですよ」

と、一人目。

なにも言わない、二人目。

「えー、そうなんですか……」

と、おれ。

そこへ偶然休日出勤の弊社代表取締役。おれとは通勤経路が逆なので、なにか知っているかもしれない。

「あ、こんにちは。あの、このあたりにクリーニング屋、ありませんか?」

と、おれ。

「その道を一本行ったところにありますよ」

と、弊社代表取締役

「あ、その店、無くなっちゃったみたいです」

と、おれ。

「ちょっと無効の、長者町の交差点の方の、広い道沿いならあると思いますが……、すみません、わからんですね」

と、おれ。

「そうですか」

と、一人目。

そして、二人はあてもなくクリーニング屋を求めて歩みだした。しかし、大型連休中に、クリーング屋って開いているのかしらん。

 

「どうも、ご苦労さまです。ちょっと、図書館行くのに、自転車置きにきただけなので、それでは」

と、おれ。

おれは伊勢佐木モールに歩き始めた。さっきの二人組に会わなければいいのだけれど(会わなかった)。

 

伊勢佐木モール。心なしか、普段の休日より人が多いような気がする。でかいダイソーに行く。ワイングラス(おれはよく割る)、ビールグラス(ついでに)、スニーカー用洗剤、ブラシ、レジャーシート、顆粒だしの素、便座カバー、ぞうきん三枚、を買う。ついでに地下に行って、連休中特売のエアリズム・インナーを買う。シームレスのアンダーシャツ。すでに一着買っていて、その着心地にびっくりしたからだ。どうせなら、シームレスのパンツも売ればいいのにと思うが、そこはグンゼのテリトリーなのか。

BODY WILDの切りっぱなしAIRZはずり落ちないの? スースーするの? - 関内関外日記

 

そしておれは魯肉飯を食いたくなった。そういうときもある。おれの頭の中には中華街以外の近所で魯肉飯を提供する店は三つほどある。そのうちの一つに入る。

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Wikipediaによれば、本場の魯肉飯はおかずとともに食べるものであり、日本の丼ものとは違うようだ。なので大盛りだ。牛丼の大盛りが食えなくなったおれにも、それでちょうどいい。店としては「おかず頼めよな」というところかもしれないが、そこは勘弁してほしい。

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空はスカッと晴れていて、日射しが強く感じられた。お肌のケアが大切な季節。大岡川には鯉のぼり。パラパラでなにかものさみしいところがある。

図書館では、ジャン・グルニエの『孤島』と、阿久津主税の『矢倉・角換わりの教科書』を借りた。

図書館から出て、なんとはなしに会社までの経路を検索してみると、普段自分が歩かない野毛を突っ切る道が提示された。おれはその道を行くことにした。野毛の街は昼からにぎやかで、店先の屋外席で明るいうちからがんがんビール行ってる人たちがいて、ここは年中オクトーバーフェスだな、と思った。

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会社に寄って自転車にまたがる。弊社代表取締役には挨拶しない。仕事の邪魔だろう。帰りはスーパーへ。と、その前に、ちょっと歩き疲れたのでサンマルクカフェに入る。アイスコーヒーのLを頼んでみると、思っていたよりでかいのが出てきた。借りてきたばかりの『孤島』を読む。読み終える。

スーパーあおば。キャベツが安かったので、まだ備蓄があるが、買う。ブロッコリーが100円台前半だったので、買う。ブロはよいが、ブロは高い。あとは、モヤシと、キノコ類と、ササミ、特売の缶チューハイと炭酸水。外はまだ明るい。

帰宅して、洗濯。そして、100円ショップで買った洗剤とブラシを使って、スニーカーを洗ってみる。まだまだ履けるけど、汚れが気になるナイキのスニーカー。捨てようかどうしようか迷ってみたが、200円でよみがえるかもしれないならやってみる価値はある。そして、おれはたくさんの靴を持っている。安い靴をたくさん持って、順繰りに履いているので、駄目になるまで時間がかかる。メガネも似たような買い方、使い方をしている。服もそうだ。どうもおれは、そんなタイプだ。

スニーカーを外に出す。トイレまわりを掃除する。洗濯が終わる。洗濯物を干す。「これがベンチャー企業の発明では掴めなかったエアリズムか」などと思う。おれには掴める。そとは少し暗くなって、薄っすらと夕焼けの光。

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