大好きな『止められるか、俺たちを』の白石和彌監督の評判作であって、なおかつこういう感じの映画が好きなおれが観ていなかった理由は……とくにない。なんとなくタイミングを逃していた。ただ、役所広司が主演というので、そういう役もできるだろうし、まあよい出来なのだろうな、とか思っていた。
っつーか、役所広司は『シャブ極道』じゃねえの。
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でもまあ、『孤狼の血』ではシャブシャブしていない善良な警察官なので安心だ。いや、そうでもないか。そうでもないどころではないか。
っつーか、役所広司は『渇き。』じゃねえの。
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おれは原作を読んでいる。原作との相違点などが気になる立場といえる。原作の持つ強烈なラーメンの獣臭さが脱臭されていたらどうしようかと思った。役所広司がよくある主人公の一線を越えないようなやつになっていたらどうしようと。
それは杞憂だったといっていい。役所広司は完全にクズでバイオレンスでダーティ・セックスなイカレ野郎だった。車もカローラからグロリアにランクアップしている。悪くない。
っつーわけで、おれのなかで役所広司はかなりシャブい役者ということになる。むしろ、それ以外の役所広司を見たことがあるのか? というくらいだ。そのくらい、『孤狼の血』でも役所っぷりを見せてくれていた。広島弁(呉弁?)がどのくらい正確なのか、関東育ちの広島人二世のおれにはわからない。しかし、魂が伝わればそれでいいのである。
脇を固めるメンツもよかった。競馬会のCMでしかよく知らないが、松坂桃李くんもよかった。江口洋介や竹野内豊(後者については馴染みすぎていて「どこ出てたっけ?」レベル)の二枚目もよかった。石橋蓮司らしさ、というのも見どころだろう。もちろん、白石組の常連といってもいいだろうか、ピエール瀧もちょっと情けない強面としていい味を出していた。それにバーのママが真木よう子であって、なにやらオールスター感はある。『アウトレイジ』か、という。
いや、おれは『アウトレイジ』よりこっちが好きかな。なんというか、泥臭さというか、豚の糞臭さというものがあって、そのなかを這いつくばり、のたうち回るノワール感というものがいいのだ。必死、というのか、なんというか、おれには語彙がないのだけれど。
え、どういう話? そんなんWikipediaでも見ればいいだろ。
え、撮影期間短くね? これぞ白石和彌監督が若松孝二監督から引き継いだものだろうか。あと、白石監督、首の模型とか好きね。これからも注目やで。それで、なんとなく『孤狼の血』見てないそこのあなたは見るべきだ。あとは、たとえば、韓国映画のノワール好きとか、ともかくラーメンが獣臭い映画が好きな人間、そんなのも見るがいい。しばらく、このヒリヒリした感じがまとわりつくようだぜ。
で、エンドロール見ながら「原作が女性?」と思ったら、たしかに女性だった。
しかも、山形県山形市在住とある。これはノワールの巨匠であるところの深町秋生先生と同じじゃないか。すごいな、山形市、どんだけノワール溜め込んでるんだとか思った。まあ、「小説家(ライター)になろう講座」出身で一緒なのだけれど。……文化というのか、そういうものは、作ろうとすれば形になるものだな。いや、この山形の例はとくべつの成功例なのかもしれないが。行くか、山形! いや、それは無理。
以上。
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白石監督と演者のサイン入りパンフレットは宝物なのだぜ。
何映画?