ケン・リュウ『紙の動物園』を読む

 

ケン・リュウの短編集である。短編集のタイトルになった「紙の動物園」がトップ・バッターとして打席に入る。「紙の動物園」はネビュラ賞ヒューゴー賞世界幻想文学大賞の三冠を制した作品である。おれは現在進行系でSF業界のことを知らぬので、「ヒューゴー賞ネビュラ賞と書いてあればそれなりに信頼できる」という権威主義的な読者なので、その上なにかもう一冠となったら、参るしかないのである。

して、「紙の動物園」、これには参った。参ったが、「そんなん卑怯じゃんよ、泣かせにかかってんじゃんよ」と思いもした。でも、結局のところ「泣き」に負けてるんだから、そりゃあんたの勝ちだ。三冠の価値だ、といえる。

その「紙の動物園」に続いて出てくるのが「もののあはれ」という作品である。原題は「Mono no Aware」。中国SF作家が日本人を主人公に? と疑問を持つような人も、本作を読めば参ってしまうだろう。これも強い作品である。強いのが一番、二番ときて、もう白旗をあげるしかねえよな、というのがSF短編集『紙の動物園』なのである。

おれは壮大としかいえぬ大作『天冥の標』(これが中国語訳されてすごい数の中国人を驚かせたら愉快だな)を読み終わったあと、しばらくSFを読めないでいたのだが、中国SFアンソロジー『折りたたみ北京』を読み、このケン・リュウの『紙の動物園』を読んだことで、なにやらまたSFが読みたくなってきた。これはあくまでおれの読書歴であって、とくにあなたになにか訴えるものでもないと思うのだけれど、そんなところはある。なんか新鮮で驚異のSFに巡り会えた、という感触だ。「なんか最近、SF読んでねえなあ」という人がいて、中国SFにあたってないのであれば、そこんところ、ちょっとあたってみてもいいんじゃねえの、と思う次第である。以上。

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折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5036)

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