疲れている。
この疲れは、精神疾患と関連している抑うつや倦怠とは違う。それはおれの身体をよく知っているおれがそう言っているのだから、そうなのだ。
というわけで、この疲れは……単なる疲れ? どういっていいかわからない。むしろ、おれの身体をよく知っているおれだからこそ、精神疾患と関連した疲れを把握できていない可能性もある。
というわけで、うんざりしているので、とくに書くこともない。
新しいノートパソコンをセットアップ(というほどたいしたことでもないのだが、昔に比べて)しても、さて何をしようということもない。
気温が下がってきて、ロードバイク(おれのすばらしいコルナゴ)に乗ろうかとか、ちょっと走ろうかという気もしない。
たとえば、上の写真はなんだろうか。iPhoneから適当にアップしたものだ。撮ったときは、なにかおもしろいと思ったのだろう。なにがおもしろいのか。お面手ぬぐいが2枚ついてくるところがおもしろいのか。
しかし、こういったDVDを買って、「春歌で踊るかくし芸」を学ぶような人は、すごく真面目なんじゃないかと思う。真面目な性格の昭和のサラリーマンが、定年退職して、同窓会なんかをやろうというときに、一念発起して、「ズンドコ節」でちょっとHな踊りをしようと思うに違いない。
それがうまくいくだろうか?
なにかこう、寒い結果に終わりそうでならない。おれはたまらなく悲しい。この世はいつも悲しくて、悲しくなくなくなったときには、もう息をしていない。
うら寂しい港町があって、ウミネコだけが鳴いている。ドラム缶で焚き火をしていて、ときおり焼ける木の爆ぜる音がする。おれは一人で「ラバウル小唄」を口ずさんでいる。その横を、自転車に乗った女子中学生が通り過ぎる。
「おまわりさん、あの人です」
おれはおまわりさんの目を見据えて、こう言うだろう。
「そうです、私が変なおじさんです」
おれはちょっとHな踊りを始める。
踊りはぎこちなく、いかにも不出来だった。
懲役12年。
刑務所から出るおれを待つ人はなし。所持金1万2,729円。
おれは宅配ピザ屋に行き、持ち帰りを注文する。届ける先がないからだ。おれはそれを公園で貪り食うだろう。ビールでなくコーラを飲むかもしれない。刑務所の食生活で失われていたすべてが満たされ、脳内には幸せな物質であふれるだろう。
食い終えたおれは、すっくと立ち上がる。
おれはお面手ぬぐいを装着すると、「九段の母」を大声で歌いながら、ちょっとHな踊りをする。
踊りは滑らかで、公園はバイブスに包まれた。
「おまわりさん、あの人です」
懲役16年。
二度目の出所はない。
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