実写版『デビルマン』……なんでも解説付きだと見られるもんよな

こちらの記事を読んだ。

nlab.itmedia.co.jp

――実写版デビルマンは深い、ということですか?

 一見して分からない事が多過ぎるだけで、深くはないです。

このやりとりを読んで、なぜわからないが「観なくては」と思うようになった。都合のいいことにアマゾンプライムビデオで公開されていた。

 

デビルマン

デビルマン

 

これを、「もう寝るか」という時間になって再生してしまった。「プライムビデオにあることの確認」くらいのつもりだったのだが。

それで、こちらのTIPSを読みながら、最後まで観ちゃったんよな。

togetter.com

それで、感想というか、まずこの視聴スタイル。携帯端末で時系列の解説を読みながら、映画を観る。これな、これはなんというか、いくら映画本編が退屈なものだったとしても、集中力が保たれるんよな。眠くならん。

おれは美術展などで音声ガイドを借りない派なのだけれど、ああいうガイドってこんな感じなのかなって思った。わからんけど。

 

で、実写版『デビルマン』だ。おれは大人になって原作漫画を読んで、「漫画がここまでできるのか!」と非常に衝撃を受けた。そして、『DEVILMAN crybaby』も一気に観た。あと、子供のころに何度目かのアニメ版再放送を見ていた覚えはある。そんな感じ。

そんな感じのおれ、まあ『デビルマン』はすげえもんだ、という意識はある。さて、どんなんだ、というと、まあ、時系列的に上のtogetterのまとめでも読めば十分……じゃあないな。

なんというか、いいところから言えば、CGの戦闘シーンとかは割と、というか、結構いいじゃねえかって思ったよ。声はともかくとして、場面だけ切り抜けば、結構かっこいいよなって。それに、ヤンキーの小競り合いみたいなところは自然な感じだった。地球儀を焼くシーンとかの、女学生のパニックっぷり、ものを投げつけたりするあたりとか、これも自然な感じだった。

つーか、監督の作品歴なんかも見たうえで言うけど、そういう規模のアクションというか、所作については、だいたい悪くないんだよ。ただ、なんかマシンガンをもたせると怪しくなる。ワイヤーアクションで飛ばせてみると地に落ちる、そういうところがある。そういう距離適性の違いみたいなのがあって、それが「地球規模」、「人類規模」にならざるをえない『デビルマン』は厳しいよなって思ったんだよな。あんまり厳しい見方じゃないかな。なんかこう、『デビルマン』をヤンキー高校の抗争に落とし込めばよかったんだよ(それはそれで地雷臭がひどい)。

あとは、染谷将太が子役といっていい年齢で出演していたのだけれど、染谷君はよかったわ。主演二人を始めとした「これはちょっと」というなかで、ちゃんと演技している、いい表情している。よくぞこの映画から巣立っていったものだ。いや、この映画から巣立ったわけではないのだろうけれど。

それにしてもまあ、アポカリプスデブとか、田んぼのなかの「あー」とか、よくわからん見どころは生まれてしまっている。そう、田んぼのなかの「あー」はすげえと思ったな。なんの感情による叫びか、まったくわからんのだ。叫びといっていいのかもわからん。「こういう感情を表現するために声を出したのだろう」という推測ができない。その意味では、正解が見えないから、どういう誤りかもわからない。ゆえに、この「あー」は失敗と呼べないのではないか、と思うほどだ。こんなすごいシーン、ドキュメンタリー映画でも撮れやしない。頭の中にこびりついて離れない。このシーンのためだけにも『実デビ』観てもいいんじゃねえかって気になる。

と、そんなところだ。「すすんでつまらないものを観るのは人生の時間の無駄」という考え方もあるだろうし、実のところおれもその考え方に近いんだけれど、「ただつまらない」ではなく、すごくすごい「つまらない」、というか、とんでもないものというものは、まあ観るに値するような気もする。そういう意味で、(おれがほめすぎたので伝わっていないかもしれないが)ちょっとこの『デビルマン』に時間を使ってもいいような気はするのよ。でもね、説明付きで観たほうがいいかどうかはわからない。携帯端末に目を落としている間にアポカリプスデブタイムになってしまって慌てて巻き戻したりすることになるし、この映画の持ち味である唐突さや筋の通らなさを「筋が通っていませんよ」と理解しながら観てしまう、というのは、やや興を削ぐかもしれない。まっさらに一回観て、さらに解説つきで観る、というのがいいのかもしれない。ただ、おれのなかの「すすんでつまらないものを観るのは人生の時間の無駄」基準曰く、一度で十分ですよ、ではある。

 

以上、ハッピーバースデー。

 

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デビルマン』にラップという意味では『実デビ』が先駆者となろう。

 

デビルマン 全5巻セット 講談社漫画文庫

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 漫画は本当にすげえから。