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預金したら手数料を取られる? 銀行の常識は変わるのか:朝日新聞デジタル

日本銀行の超低金利政策で、銀行はお金を貸しても収益を上げられない状況が続いている。預金を持つコストがかさむため、利息を払うどころか、逆に「口座維持手数料」を預金者から徴収するのでは、との観測が出ている。

二十数年前、一家離散のあと、おれはあまり治安のよくない地域のアパートに移り住んだ。とりあえず職はあったが、銀行口座というものがなかった。おれは何ヶ月かのあいだ、給料を(今とたいして変わらない給料を!)、安アパートのどこだったかに隠した。貧乏人しか住んでいない、スラムのようなアパートだからこそ、おれはよけい不安になった。おれのわずかな金が、空き巣によって奪われるのではないか。そういう恐怖があった。とはいえ、全財産を持ち歩くのも怖かった。あらゆるものが恐怖であった。

そんなおれが銀行口座というものを作った。家賃の支払いに都合のいい銀行、というだけで、ある銀行に作った。おれは給料をそこに振り込むようにしてもらった。おれの金は、実に安全なところに移された。銀行に銀行強盗が入ったところで、おれの金だけ盗まれました、ということはあるまい。おれは安心した。すごく安心した。こんなに安心できることがあるのかと思った。

そしておれはクレジットカードを作れるような身分になった(給料はたいして変わらないが!)。銀行の口座から、クレジットカードの使用料が引き落とされる。もし、クレジットカード会社が襲撃されても、クラッキングされても、おれの金だけ、ということはないだろう。おれはますます安心した。

……というわけで、おれにとって銀行というのは、絶対的に安心できる金庫のようなものである。おれが銀行に預けるはした金などにくらべて、銀行がおれに与えてくれる安心感のほうが大きいといえる。ゆえに、年長者がATMの手数料について文句を言うことが理解できなかった。おれの金を守ってくれているのだから、それなりの使用料金を払ってもいいんじゃないのか。むしろ、それでも当然のことじゃないのか。おれはそう思った。

そう思うおれは、銀行に金を預けておけば、ちょっとは利息を得られるなんていう実感からは遠いところにいる。おれより年長の人間などは、銀行に預ければ金が増えるという意識もあるのだろう。プラスからゼロどころか、マイナスになるというのは理解しがたいのあろう。だが、おれにとっては当然の手数料であり、サービス料であり、ATMの手数料くらい当然の話しだろうと思ってしまうのだ。

あらためていうまでもないだろうが、おれが手数料くらいなんでもない金持ちであるわけじゃない。そんなはずはない。ただ、貧乏人のおれが、立派なすみかに立派な防犯システム、立派なタンス、金庫を持つに比べたら、銀行にいくらか払って安心を得ることのほうがましなのだ。もちろん、貧乏人ゆえに、「一ヶ月、千円な」とか言われたら猛反発する。だが、それ以下なら、数百円なら、まあちょっとおもしろくはないけれど、そんなもんだろうと思うのだ。あんたはどうだろう? おれはこんなんだ。

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