緊急事態宣言が解除されたので髪を切ったこと

おれは2020年4月7日にこんなことを書いた。

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が、またおれは「なんとなく」の気が芽生えてきた。ちょっとこのまま、髪を伸ばしてみようか、ということだ。願掛け、でもねえが、どんなんなるか、またちょっと伸ばすか、ということだ。もう歳だし、そんなに伸びないかもしれない。朝、髪を洗うのも面倒だ。そうだ、おれはそのために、ここ数年はかなり短めのツーブロックにしていたのだ。それを、今、打ち捨てて、長髪を目指す。

おれは、結局のところ、長髪を目指した。「緊急事態宣言が解除されるまで、髪は切らない」だ。で、おれの髪は肩まで伸びたのか? ノーだ。うっとうしい前髪などをオールバック的に固めて、なにやら怪しいマッドサイエンティスト的な、ドクター的な容貌になった。やさぐれ中年にはお似合いかもな、という感じがした。ただ、髪を洗うのに時間がかかってむかついた。

ようやく、緊急事態宣言が解除された。床屋はすごく混んでいるかもしれない。そう思った。賢い人は、宣言の解除を待たずして、空いているであろう先週末あたりに切ったのではないか? まあいい、ともかく、おれは床屋に行った。

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理容室は、開いていた。コロナ禍で閉店しているわけではなかった。おれが入ったとき、五席のうち三席にお客さんがいて、理容師は三人しかいなかった。昼過ぎなので、昼食に出ているのかもしれない。おれのあとに一人お客さんが来て、おれとちょうど一人分空けて座った。ソーシャルディスタンシングだ。しかしなんだろう、なんか待合の椅子も新しくなったような気がするし、なにか店内が整頓されて広くなっているような気がした。なにか、変えたのかもしれない。

あまり待たずに、四人目の理容師が現れた。おれは促されて席に座った。マスクを取って、メガネを外して。おれの担当になったのは、「声の小さい理容師」だった。

おれの行く理容室には五人の理容師がいる。

  • 「マスター」と老人の客に呼ばれた理容師
  • メガネをかけて頭にはバンダナをしている理容師
  • 左右対称をとても気にする理容師
  • バリカンを駆使する理容師
  • 声の小さい理容師

「声の小さい理容師」は、声が小さい。マスク越しだと何を言っているのか聞こえない。今日はマスクをしていなかったが、換気のためドアが開いているので、道路の交通音のせいで、やはり何を言っているのか聞き取りにくかった。「はい」、「いいえ」で答えられる問いなら適当に「はい、それで」でいいのだが、そうでない質問には意識を集中させて、なんとか答えなければならない。正直いって、一番苦手な理容師である。

「全体ツーブロックで4cm、短いところは3mm、耳が出るくらいで」

とおれは言った。

小さな声で、

「もみあげはどうしますか?」

と言ったような感じがしたので、「自然な感じに」と答えた。おれはもみあげのネイチャーをよく知らない。

「今、顔そりはやっていません」というようなことを言うので、店内の貼り紙を見ていたおれは「はい、わかっています」と答えた。

はたして理髪店、美容室はクラスターになるのか。「なった例がある」というのは確かだろう。そして、一番口元あたりを触れまくるのは「顔そり」だというのにも納得がいった。不特定多数の客が訪れ、濃厚接触らしきことをして、またべつの客が来る。正直、おれは、ちょっと怖かった。「なんとなく髪を切らない」と言いつつ、「感染の可能性があるのでは?」と思っていたことは否めない。

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すると、手になにか持っておれの手に向けてきた。除菌アルコールかなにかだった。おれは手を出して噴射を受けると、両手をもみあわせたりした。この行為に感染症対策の意味があるのかどうか、おれにはわからない。

そして散髪は始まる。どのくらい切られているのか、どうしてもわからない。とりあえず切り終わったあたりで、鏡で背面、側面を見ることになる。前髪がちょっと長いような気がしたが、まあいいかという気になる。顔そりはなかったが、シャンプーはあった。顔そりというのは、「必要なのかな?」といつも思うのだけれど、なければないで物足りない感じはした。

会計をして、店を出た。

ちょっと、外食をしようかと思った。たぶん、飲食店での外食というのは二ヶ月以上していない。味噌ラーメンの酔亭か、伝統の奇珍か、山手の商店街の介一家か……。どこも混んでいそうだ。と、目の前に壱○家という圧倒的に普通の家系ラーメン的なラーメン屋があるではないか。おれはそこに入った。先客2名。おれが券売機で食券を買っている間に、二人がけの席に水が用意されていた。ソーシャルディスタンシング。

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ネギ塩ラーメン。お好みは全部普通。おれはもとよりあまり店でものを食べないのだけれど、それにしたって、こんなに長いあいだ外食をしない、ということもない。久しぶりだなーと思う。ひさびさのラーメン屋のラーメン。ああ、こういう感じだよな、と思う。席にそなえられたゴマなどをふりかけてみたりもする。悪くない。おれはあっという間にたいらげてしまった。

壱まる家 (壱○家) - 山手/ラーメン [食べログ]

その帰り道、べつの床屋のドアが開いていて、中を覗くと絶賛顔ぞり中だった。理髪店組合的なものの取り決めじゃないのね、という感じ。奇珍は混んでいるようだった。ただ、行列はできていなかった。

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なんか、ど真ん中に居座ってる猫がいた。

 

以上。