おれのなかの無敵の人

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脳内自粛警察になりかけているので吐き出す

おれはあるとき「どのみち自分は刑務所に行こうが失うものもとくにない人間だ」と気づいてから、あまり街なかで他人にいらつくことがなくなった。

2020/06/04 11:55

おれはわりと街なかでマナーのなってないやつとかのことが嫌いでいちいちむかつくタイプだった。しかし、あるとき、おれの先行きは自死か路上か刑務所だと悟ったことによって、むかつくことが少なくなった。どうせ刑務所に行ってもどうということのない人生を歩んできた。財産もなければ家庭もない、花を入れる花瓶もない。だったら、もしもちょっとした、それでもおれにとって許せないようなトラブル、たとえばだれかが吐いたたんがおれにひっかかったりするようなことがあったら、おれはもうそいつを車道に蹴り出して首を思い切り踏み潰しす。相手がおれなんかよりずっと強靭な肉体を持っていても、せめて片目だけでも潰してやろう、失明させてやろう。その流れがオートマチックにできるようにしよう、いや、オートマチックにできるようになっている、そんな観念を抱いている。だからおれはもう他人のちょっとしたマナー違反にむかついたりはしない。正確に言えば、むかつくことはむかつくが、むかつくあまりになにか注意してやろうとか、そういう行動へのハードルがそうとうに高くなった。べつにおれはおまえをどうにかしても平気な人間だから、そういうつもりでおれはおれに向かって流れてくるタバコの煙にもあまり感情が動かない。とはいえ、ちょっとはむかつくのでじっとにらみつける癖はついてしまった。無表情に、目線をそらすことなく。べつにトラブルを起こそうという気はないつもりなのだけれど、トラブルになってもいいやという気がないわけでもない。おれは非常にフラットに暴力をふるうことができると信じていたいし、暴力によって失われるものもない。暴力が開かれていることによって、おれはちょっとしたトラブルは起こさないし、心は安定している。ようするにおれは無敵の人らしく生きていて、とても平和だ。