もしもビートルズを忘れた世界に転生したら? 映画『イエスタディ』

 

イエスタデイ (字幕版)

イエスタデイ (字幕版)

  • 発売日: 2020/04/08
  • メディア: Prime Video
 
イエスタデイ (吹替版)

イエスタデイ (吹替版)

  • 発売日: 2020/04/09
  • メディア: Prime Video
 

もし世界中の人間からビートルズの記憶を失って、売れないミュージシャンだけにその記憶が残ったら?

とてもおもしろい設定だと思う。ビートルズの曲はビートルズじゃなくても売れるのか。どんな境遇であっても見いだされるのか。

おれとビートルズビートルズとおれ。おれはビートルズのファンとはいえない。いえないけれど、中学生のころ、洋楽を聴き始めて、やはりビートルズは聴いた。買って、聴いた。ベスト盤のようなものだったが聴いた。これはいいなと思った。思ったけれど、マイベストのバンドにはしなかった。しなかった、という意識は説明し難いが、「これはすばらしいが、おれのものではないない」というところだ。もちろん、ビートルズのすごさは否定し難い。

その否定し難いところがビートルズのすごいところであって、「もしビートルズのことを知らない世界線にあって」という仮説が成り立つ。この設定、勝ちだと思う。そして、この映画、ちゃんと勝っていた。とんでもないぶっ飛びはないにせよ、この設定を丁寧に、そして、エモく仕上げていたと思う。とても、丁寧で、ちゃんと要所を抑えている、そんな感じだ。

それにしてもどうなんだろうね。もしもピカソを自分以外知らない世界になったとして、ピカソのような絵を描いたところで認められはしないだろう。村上春樹が知られなくなった世界で、『風の歌を聴け』のようなものを書いたところで、だれかが褒めるだろうか。想像は尽きない。

つーわけで、「この設定、ちょっとおもしろそうだな」と思った人には、わりと進められる。「ビートルズ? 良さがぜんぜんわかんねー」という人にはどうかしらん。そんなところだ。以上だ。