天下りじゃない、地下潜りがしたいんだ

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国家公務員I種試験を経て幹部候補生として採用されたキャリア官僚は、程度の差こそあれ、同期入省者はほぼ横並びに昇進していく。その過程で上位ポストに就くことができなかった者は職が与えられず、退職する以外に選択肢は無くなってしまう。事務方のトップである事務次官は1名であるから、同期入省者か後年入省者から事務次官(または次官級ポスト)が出るまでに、その他の同期キャリア官僚は総て退職することになる。1985年の60歳定年制の導入前後でこの実態に変化はない。この退職者たちは、省庁による斡旋を受け、それぞれ退職時の地位に応じた地位・待遇のポストに再就職する。一般にこの早期勧奨退職慣行が「天下り」と呼ばれている。

天下り - Wikipedia

こんな天の上の話はしらない。おれは地上の話をしたい。そして地下に至る話をしたい。

この社会、官僚制度のようなきれいなピラミッドを描いているわけではない。だが、なだらかな山、富士山のような形はしているだろう。とうぜん、その競争地獄のなかで落ちこぼれていくものもいるだろう。地に横たわるものもいるだろう。

一億総活躍社会とやらでは、その敗者に鞭打って、また山登りをさせるのだろうか。そのつもりだろう。けれど、地に横たわり、鞭を受けつづけてもなお動かぬものもいるはずだ。動きたくても動けないやつもいれば、動きたくなくて動かないやつもいるはずだ。

おれもそのどちらかだ。鞭で叩かれようとも動きたくない。坂を登りたくない、だれかの頭を踏みつけて上に行こうとも思わない。ぼんやりと仰向けに寝っ転がって、晴れてんだか曇ってんだかわかんない空眺めていたい。ただそれだけでいい。

そのような人間のために、天下りならぬ地下潜りが必要だろう。負け犬のすみか、人生敗北者の集まるところ。上からなにか降りてくるなら、おれたちはさらに降りよう。そんな地下がほしい。選挙権もいらないし、デモもしなければお上への不平不満もいわない。最低限の衣食住を与えられればそれでいい。もう、なにもしたくない。穴くらいは自分たちで掘るから、おれをそこに入れてくれ。そしておれが死んでもおれの屍体を火で焼くな。文明の中に吊るして腐らせておけばいい。こんなものに生まれてきてはならないね。そんな見本。

もう、うんざりしている。うんざりしている人間をほうっておくと、いろいろと面倒を起こすかもしれないぜ。上級国民の頭をいきなり金属バットでぶん殴ったりするかもしれないぜ。どこかに火をつけるかもしれないぜ。危ないガスを撒き散らすかもしれないぜ。さあ、おれが疲れているあいだに、地下を用意してくれ。そこに引きずっていってくれ。下民が栽培されている農場に送ってくれ。晴れの日もあれば雨の日もあるだろう。下民に日よけはいらないし、傘をさす必要もない。悪くないトレードだ。そうだ、おれはもうひどく疲れて、なにもしたくない。地下に、潜っていたいんだ……。