マイルド弱者

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ふと、「マイルド弱者」という言葉が浮かんだ。少し前に話題になって消えたのか定着したのかわからない、「マイルドヤンキー」の「マイルド」だ。

「弱者」というと、これはかなり強い言葉だ。「社会的弱者」とかになると、けっこう強い言葉だ。勘違いしてもらっては困るが、「弱者」がなんかの棒を振り回していて逆に強い、という意味ではない。言葉としての……強度というか、そういうものだ。

そしておれは、自らを弱い生きものと思いながら「弱者」というほどには「弱者」ではないよな、などと思ってしまう。それでもおれはレジリエンスもないし、グリットもない、ほんとうにしょうもない人格の持ち主で、睡眠時無呼吸症候群と消極性障害II型を患っていて、そこらへんのおっさんと殴り合って勝てる確率は50%以下だろう。おまけに頼れる親族も、人脈もなければ、金で解決しようにも、生きていく金でヒーヒー言ってる。ヒーヒー。

不意の一発で、社会の底辺の近くまで落ちる。不意でなくとも、歳をとっていけば、それにつれどんどん下がっていくという人生無設計。相当に弱いぜ、おれ。とくに双極性障害で鬱側に振れているときなんて、文字通り丸くなって動けないんだぜ。そんなふうに弱いけど、かといって、おれは今のところ少し大きいテレビもあれば、円高のときにイギリスから個人輸入したフルカーボンのロードバイクも持っているし、このパソコン、iPhone SE図書館から借りる本が途切れないくらいの知性、そんなものはある。あるから、おれはおれを「弱者」だ、と言い切るにはひっかかりがある。

そしてまた、これを見る人によっては、「何言ってんだ、十分に弱者だろう」という意見もあるだろうし、「何言ってんだ、十分に強者だろう」という意見も出てくるだろう。おれとしても、現段階、今の今は、それなりです、という気持ちもある。

とはいえ、お先は真っ暗だ。薬を飲んでいないと希死念慮で脳みそがあふれかえる。動悸はアロチノロール塩酸塩で抑える。生活に確固たる基盤がなくてぐらぐらしているからチャレンジしようもないし、そもそもなににどうチャレンジしていいかもわからないし、なによりおれはチャレンジなんてものが大嫌いだ。

そんなおれはなんなのか。マイルド弱者。そんな自己規定はどうだろうか。なんとなく、そんな言葉が思いついた。それだけのこと。しかしまあ、人それぞれ勝手に生きたり、生きられなかったりしているだろうが、それがあるのであれば「マイルド強者」くらいが一番しあわせなのかもしれないなどと思ったりはする。来世に期待しよう。以上。