トランプが大統領。おれはフィリップ・K・ディックの世界に住んでいるのか? 

ドナルド・トランプアメリカ合衆国の大統領になった。なにか、なんというか、実に妙な気持ちになった。おれはP.K.ディックの世界の住人なのか、というような気になった。妙な出自の、妙な人間が独裁者となるディストピア。そんなイメージ。トランプという名前が、それに拍車をかける。

といっても、実際にトランプが大統領になったところで、どこまで世界は変わるのだろうか。おれにはよくわからない。実際のところ、べつになにもできなかったし、なにも変わりませんでした、おしまい、ということもあるかもしれない。少なくともメキシコとの間に壁は作られないだろう。

この前、『立候補』というドキュメンタリー映画を観た。踊るマック赤坂を見て、「彼が立候補者? わたしの国にはこんなクレイジーな人はいない」と言っていた黒人女性が出てきたが、もしも彼女の母国がアメリカだったら、いまごろどんな顔をしているだろう? 規模の大きな大きなマック赤坂。違うか?

それにしてもまあ、前評判というか、事前予測というのはなんだったのか。内心ヒラリー支持だけど、マッチョな夫の前では「トランプよ」とかいう調査のずれよりも、「トランプ支持とか言うと馬鹿にされるからヒラリーと言っておこう」という層が厚かったのかどうか。ネイト・シルバーも今回は外した。

あるいは、暗殺されるのではないか、というありえそうもない予感もある。民主党支持者にとっても、共和党支持者の一部にとっても、トランプは邪魔なやつだ。ひょっとしたら、どこかの機関が、「中東帰りのこの心的外傷を負った元兵士を犯人役にしよう」とか密談しているかもしれない。まあ、これはおれの妄想。

おもしろいか、おもしろくないか、で言えば、おもしろい、の方にころんだ、と言わざるをえない。回り回っておれの生活になにかのマイナスがあっても、だ。ヒラリー・クリントンでは、そういう気持ちにもならなかったろうし、わざわざ日記に書き留める気も起こらなかっただろう。おもしろければ世界はそれでいい。そうとも言える、そうとも言えない。

おれはずっと、Trump Penceというキャッチフレーズの意味がわからなかった。Penceは副大統領候補の名前だった。それだけのことだった。トランプは最高齢のアメリカ大統領になるらしい。戦後生まれだ。けど、けっこうな歳だ。もっとも、アメリカ人にとって「戦後」の「戦」はどれを指すのかよく知らない。南北戦争かもしれないが。

いずれにせよ、もう決まってしまった。ひょっとしたら、共和党がべつのやつを指名するという可能性が0.1%くらいあるのかもしれないが、そんなことはしないだろう。トランプという名の大統領。大金持ちで、政治経験はない。突飛なことばかり言う。泡沫候補だと思われていた。厄介者。しかし、世界の大国のトップに立つ。一人の人間がいったいどれだけ世界というものに影響をあたえるのだろうか。おれには想像がつかない。しかし、現実となってその世界に生きることになる。おれがいつ死ぬか、トランプがいつ死ぬかしらないが、少し興味深くはある。

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いたずらの問題 (創元SF文庫)

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『いたずらの問題』フィリップ・K・ディック - 関内関外日記(跡地)