ビッグマウス・ストライクス・アゲイン

http://www.zakzak.co.jp/spo/2004_10/s2004101803.html
 今シーズンまで、日本プロ野球には「ビッグマウス二大男」がいた。読売巨人軍仁志敏久内野手と、オリックスブルーウェーブ川口知哉投手である。ところが、今シーズンを以て川口は戦力外となり、仁志一人が日本プロ野球ビッグマウスを背負うことになったのだ。
 ご存じの通り仁志の十八番はイチロー批判である。「セ・リーグなら、あそこまでは打てなかった」という仁志の台詞を聞いたとき、私は震え上がったものである。「この男のビッグマウスは世界規模なのか」と。そして、先日の週刊文春によると、イチローがメジャー最多安打記録を達成した後も、同様のコメントを出したという。みなさん、信じられますか? 上は首相から下は安月給で働くサラリーマンまで、日本は歓喜ムード一色だったじゃありませんか。例えは古くなってしまうが、まさにこの男、地動説を唱えたガリレオ・ガリレイの気骨の持ち主である。
 そして、さらにメジャーを視野に入れたFA宣言というニュース。私は思わず絶句してしまった。「川口の分まで背負うというのか」と。ビッグマウスには二通りある。それなりの実績があって吠える男と、実績無く吠える男である。この場合、仁志は前者、川口は後者と、仲良くわけあってきたのである。そして今、仁志はメジャーへ挑戦して、後者のピエロの役までも受け持つつもりなのだ。日本で得られる栄光と実益を蹴り、である。私のように無収入にあえぎながらも、就職のしの字も思いつかない男とは違うのだ。そして、仁志くらいの選手になると、巨人人気の凋落と、元メジャーの肩書きの重さもちゃーんとわかってるのだ。
 しかし、自分の考えなど明日どころか一呼吸後にどうなるかもわからないものだ。「おい、俺よ。仁志の言ってることは本当かも知れんぜ」。そう、私はメジャーで大活躍する仁志の姿を思わず想像してしまうのである。このようなコペルニクス的転回も、男の人生の妙味だというのか。