『プロ野球 運命を変えた一瞬』近藤唯之

プロ野球はすばらしい肉体を駆使したスポーツである。肉体は肉体として評価するのがスポーツである。なぜそれを男の人生という角度からのみとらえるのか」という私への批判も耳にする。だが、末期の水で唇をぬらされた私には、プロ野球をすばらしい肉体と技術集団ばかりの視覚からとらえるというのは無理な話だ。

 昨夜久しぶりに古本屋に行き、思わず手に取ってしまった。比較的最近の本で、イチローなどの名前も出てくる。そして、当然の事ながら一気に読み終えてしまった。この本から気に入ったフレーズを抜き出していこうとすると、全体の五分の四くらい引用するハメになるので、それはやめておこう。上はあとがきからの引用。「末期の水〜」は、筆者が八歳の頃に赤痢と肺炎で死にかけた際の話という。その後もペニシリンショックや車の故障などで何回か死にかけたようで、ここらあたりが近藤唯之の運命論や男の人生の元になっているのだろう。
 それにしても、ここまでの名調子で詰まった文章が、世の中にどれだけあるのだろう。誰もが認めるような名文じゃない、名調子‘近藤節’だ。そういう意味では、自分が一番好きなアナウンサーである及川サトルなんかも一緒だろう。きっと好き嫌いがある。近藤の文体だって、見る人が見たら取るに足らぬ駄文かもしれないし。あるいは、引用したような批判や、単純な事実誤認の多さといった問題もあるだろう。でも、そんなことはどうでもいい。そこには揺るがぬ視点と確固としたスタイルがある。そして、俺はそれが大好きなのだ。日記書くのに影響受けちゃうくらいに。