京成盃グランドマイラーズ(船橋)

 地方競馬は先行馬有利。私はこの単純な信念を守り続けている。そして、それもあながち間違いではないと思うのだ。勝つ馬を探す前に、前に行く馬を探せ。もちろん前に行く馬が負けることも沢山ある。しかし、トータルで見た場合、やはり先行馬を狙うのが鉄則だ。
 しかし、そんな鉄則を覆してしまうような魅力的な騎手がいる。山田信大という男だ。この男、廃止になった新潟から流れ着いてきた男である。いわば、倒産した会社から流れてきた腕っききとでもいうべきか。騎手稼業も黙っていれば騎乗馬が回ってきくるというものではない。かつての競馬場で鳴らした男であれ、別の競馬場に来ればアンちゃんと同じだ。普通は「なんで俺みたいな腕利きが馬に乗れないんだ」と、安い発泡酒を飲んで腹を出っぱらかして道ばたに転がるところである。しかし、羽田盃を直線一気してしまう男は、ちゃーんと考えている。「皆が前へ前へ行くのなら、俺は後ろから行ってやろう」。そう考えたのに違いない。
 私は馬柱を見ながら、コーナーごとの通過順位が若いものに線を引く癖がある。そして、線が多い馬を高く評価するのだ。しかし、[10-10-8]などと並んでいる馬柱の上に視線を移し、そこに山田信の三文字があると、それだけでワクワクしてしまう。
 さて、今年のグランドマイラーズ。快足ユニークステータスを筆頭に、ベルモントソレイユロッキーアピールトミケンマイルズ、チョウサンタイガーと、いずれ劣らぬ先行馬揃いである。そんな中、後ろから虎視眈々と勝利を狙いそうな馬がいるじゃないですか。山田信大騎乗のイシノファミリー。この馬は強烈なまくりが必殺技で、船橋で三つの重賞を取っている。まさにここが狙いの一戦だ。相手本戦はクラシック戦線で上位をにぎわせたキョウエイプライド。あるいは頭もあるか。そのほかは先行を含め、手広くいきたい。

結果:投票前にライブ映像を見ると、既に返し馬。イシノファミリーに馬体重の増減はないが、キョウエイプライドは十三キロ増。ちょっと相手選びに困る。迫り来る締め切りベル。仕方なく本当に適当に買い散らかす。そして、スタート。外の方からぐーんとユニークステークスがハナを奪いに来る。火花散る先行争い。カメラが後ろへ移動していく。後ろから二頭目あたり、やっと居た!この「どこにいるんだよ?そっからで大丈夫かよ?」というのが山田の真骨頂。映像がなく、電話で実況を聞くときなどもなおさらだ。そんなこんなで直線。先行勢の脚色はあまり鈍らない。イシノファミリーは四角で二列目近くまで前進していた。一列目の外を目指して最後のスパート。巨漢馬ゴシップコラムと共に伸びてくる……が、前が止まらない。結局、先行から張田京トミケンマイルズが抜け出して貫禄勝ち。二着は逃げた石崎隆之ユニークステータス地方競馬で前に行く馬を買わない奴は、どこの糞穴から這い出てきた馬鹿であろうか。