私が競馬をはじめた訳/ファインモーション引退

http://www.nikkansports.com/ns/horseracing/p-hr-tp0-041201-0006.html

早ければ07年にもファインの初産駒がターフに戻ってくる。

 私が初めて意識して競馬のレースを見たときの話をする。そのレースは、ナリタブライアンが勝った菊花賞である。そのときの私はナリタブライアンの名も、菊花賞というレース名も、三冠馬の意味も知らなかった。当時、競馬にはまった友人が、毎日競馬の話をしてくる。そこで、たまたま日曜にチャンネルを回していて「ちょっと見てみるか」と思っただけである。では、ナリタブライアンの走りに感動して競馬にひかれたのか。いや、違う。スティールキャストである。
 スティールキャストはぐんぐん逃げた。逃走も逃走、大逃走である。競馬を知らない私にも、これは何か異常なことだと思った。その時である。実況アナが「母プリティキャストを髣髴とさせる大逃げです」と言ったのだ。私はそこに、競馬の深淵を垣間見たような気がした。単に名前のついた動物が走っているだけではない。その背景には名前と個性を持った父と母がおり、その父と母にも……。
 ファインモーションが引退する。日刊スポーツの記者は「初産駒がターフに戻ってくる」と書いた。ファインモーションの初産駒は、「戻ってくる」どころか未だ存在すらしていない。なのに「戻ってくる」。競馬を知らない人がみたら間違いかと思うだろう。しかし、競馬ファンは知っている。ファインモーションは戻ってくるのだ。